観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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女子ボクシング 異常事態発生! WIBAウェルター級 ホリー・ホルム vs メリッサ・ヘルナンデス タイトルマッチ消滅

 Boxing

bad_blood2009年12月4日(金)アメリカ ニューメキシコ州 アルバカーキ
“BAD BLOOD”

10回戦
ホリー・ホルム(アメリカ)
判定3-0
×ビクトリア・シスネロス(アメリカ)
ユナニマスデシジョンでホリー・ホルム選手の勝利。
100-90、100-90、99-91

NABFミニマム級タイトル決定戦 8回戦
×ジョディー・エスキベル(アメリカ)
判定1-2
スザンナ・ワーナー(イギリス)
スプリットデシジョンでスザンナ・ワーナー選手の勝利。

4回戦
アマンダ・クレスピン(アメリカ)
ドロー
ジェシカ・サンチェス(アメリカ)

 QRはこのイベントをネットの*ペイパービューで観戦しました。前座試合が次々におこなわれ、セミファイナルが終了し、いよいよメインのホリー・ホルムvsメリッサ・ヘルナンデスが始まるというその時、まだ選手が入場していないリングにWIBAの役員や歌手が登場し、チャンピオンベルトの紹介やアメリカ国歌の独唱が始まりました。選手抜きでのセレモニー…こんな光景は見たことがありません。ヘンです、何かが起こっています。

 そしてリングアナウンサーの口から信じられない言葉が…。
「みなさん、悪いニュースです。ウサギが建物から出て行きました。けれども、今夜の興行”BAD BLOOD”はまだまだ続きます!どうぞお楽しみください。ホルム選手の新しい対戦相手はビクトリア・シスネロス選手です!」

 画面には知らない選手が映り「ビクトリア・シスネロス 3勝7敗2分」の文字。

 なんと、メインの世界タイトルマッチの相手が女子パウンド・フォー・パウンド最強とも言われるメリッサ・ヘルナンデス選手から、負け越し中の無名選手に変更になったらしいのです。…そんなバカな。

 その選手変更のための時間稼ぎとして、選手のいないセレモニーが行われていたということです。

 メインのカードを直前に変更することも許せませんけど、実積ゼロの無名の選手相手の代替カードを世界タイトル戦に認定するとは。正気の人たちがすることではないでしょう。なにかで試合がダメになったとしても、もっとマシな対処はなかったのでしょうか。
(その後、この試合はタイトルマッチ認定が取り消され、ノンタイトル10回戦とされました)

 この異常事態の発端は、ネットの情報を総合すると、試合前のバンデージの確認についてのゴタゴタのようです。このときの主催者側の対応に不満をいだいたヘルナンデス選手が試合を棄権して会場を出て行き、急遽、たまたま会場に居合わせた選手が彼女の代役になったのです。

 現時点で分かっていることを整理します。
・まず、前日計量の際にヘルナンデス選手は一発で計量をパス。
・ホルム選手は失敗し、サウナなどで汗を流して数十分後にパス。
・このあと、ふたりは並んで報道用の記念写真を撮りますが、この時、ヘルナンデス選手の右手にはウサギの大好物のニンジンが(ラウンドの合間にピョンピョンとリングで飛び跳ねるクセのあるホルム選手をヘルナンデス選手は数週間前からウサギと呼んで挑発中。ホルム選手はもちろんこの呼び名を嫌っていました)。
・この日の前座試合がおこなわれている頃、ホルム選手はバンデージを装着。このときヘルナンデス選手側の人が誰も立ち会っていません。
・自分側の立会人無しでバンデージが巻かれたことをヘルナンデス選手が抗議し、バンデージをほどいて目の前で巻き直すように要求。
・その後、話がこじれ試合の十数分前に棄権したヘルナンデス選手は会場を退出。
・会場に客としてきていたビクトリア・シスネロス選手が代役として選ばれ、トランクスなどの用具をこの日の4回戦に出ていたジェシカ・サンチェス選手から借りて出場。
・ビクトリア・シスネロス選手がすぐに試合に出られるようなコンディションだったのは、彼女には試合の予定があって準備していたのが、たまたま数日前にキャンセルになったばかりだったと説明されています。

 試合の会場は、ホリー・ホルム選手の地元のニューメキシコ、主催者、関係者もホルム選手のむかしからのなじみの人ばかりという環境で、ヘルナンデス選手にとっては超アウェイの環境でした。

 その中で、ヘルナンデス選手側の立ち会い無しでバンデージが巻かれたということで、チーム・ヘルナンデスは警戒態勢に入り、主催者側の中立性に疑問を持ったようです。

 バンデージは双方の立会人と、中立の立会人が見ている場所での装着が義務づけられていて、一方だけの立ち会いでの装着は禁止です。

 普通は、バンデージの巻き方に相手側がクレームを付けてきた場合は何度巻き直しさせられても文句が言えないのがボクシングの世界。

 当然、巻き直しになるはずですが、ここから両者の言い分が食い違ってきます。

 ホルム側は、バンデージを巻くときにヘルナンデス陣営を捜したけど見つからなかった。その後、巻き直しをしますと言うとヘルナンデス選手がまた行方不明になり、結局、試合を恐れて逃走した、と主張。

 ヘルナンデス側は、巻き直しを要求しても「巻き直し用のバンデージがない」という理由で拒否され、自分たちが持ってきたバンデージとテープをホルム側に渡して、充分な時間も与えたのに巻き直してくれなかったから引き上げた、と主張。

 ヘルナンデス選手は「自分は3階級も重い相手に合わせて相手のホームで試合するのに、ホルム選手は自分の階級にもかかわらず計量に失敗したり、勝手にバンデージを巻いたりする。*マルガリート選手問題もあったあとで、どうしてわたしがここで試合が出来ますか?」と声明を発表。

 いまのところ真相はヤブの中ですが、ホルム陣営としてはホルム選手に試合前の集中時間を長く取らせたくて早くバンデージを巻きたかったのでしょうし、ヘルナンデス陣営としてはアウェイで何か起これば態度が硬化するのは当然でしょうし、それを仲裁出来る人がいなかったのがくやまれます。

 WIBAのライアン・ウィソー会長は写真や動画などで見る限りとてもいい人だと思いますけど、こういうときには頼りにならないのは困りもの。いままでいくつものゴタゴタの現場にいたのにまたですか、という感じ。しっかりしてほしいです。

 なにが起こったのかはともかく、メインイベントがひとつ吹っ飛んだという現実はありますので、どちらかの選手に、あるいは両者に、今後、重いペナルティーが課せられるのは間違いないでしょう。残念です。


ホリー・ホルム選手 白/グリーン ビクトリア・シスネロス選手 黒/赤

 ホルム選手の試合ですが、パンチもフットワークも表情もさえず、超格下相手に攻め込まれる場面が何度もあり、とてもいつもと同一人物とは思えないようなひどい内容。結局、借り物の用具でリングに上がったシスネロス選手が、この日リングに上がったすべての選手の中で、一番良いボクシングをしました。

*ペイパービュー この日の試合は前座数試合からメインまで8ドル95セントでネットで配信されています。メールアドレスとクレジットカードと高速回線があれば視聴出来ます。このページの上のほうの黄色い文字HOLM VS CISNEROS — HERNANDEZ OFF CARD – GO HERE!をクリックするとペイパービューのページに飛びます。

*マルガリート選手問題 男子WBAウェルター級スーパー王者アントニオ・マルガリート選手のバンデージが今年2月の試合で不適切であったことが発覚し、ライセンスが一時停止になっていること。

WIBAウェルター級王者
ホリー・ホルム(アメリカ)30戦26勝1敗3分7KO

WIBAスーパーフェザー級王者
メリッサ・ヘルナンデス(アメリカ)14戦11勝1敗2分4KO

ビクトリア・シスネロス(アメリカ)13戦3勝8敗2分

ジョディー・エスキベル(アメリカ)11戦5勝5敗1分2KO

スザンナ・ワーナー(イギリス)18戦9勝8敗1分2KO

アマンダ・クレスピン(アメリカ)2戦0勝1敗1分

ジェシカ・サンチェス(アメリカ)4戦1勝1敗2分

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コメント

  1. 匿名 より:

    メリッサvsホルム戦のゴタゴタについての詳しい解説、参考になり、ありがたいです。代役との試合におけるホルム選手のボクシングが「ひどい内容」だったのは、このゴタゴタと無関係ではないのかもしれない・・・と、個人的には思いました。

    僭越ながら一つだけ訂正を。
    「マルガリート問題」の部分ですが、
    マルガリートはWBAの
    「スーパーウェルター級」王者ではなく、
    「ウェルター級」スーパー王者です。

  2. queensofthering より:

    ご指摘どうもありがとうございます。
    すぐに訂正いたします。

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