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世界タイトルマッチでリング禍 フリーダ・ウォルバーグ VS ディアナ・プラザック WBCスーパーフェザー級タイトルマッチ 現在までの経過 ボクシング女子

 Boxing

2013年6月14日(金)スウェーデン ストックホルム

WBCスーパーフェザー級タイトルマッチ 10回戦
王者 フリーダ・ウォルバーグ(スウェーデン)
VS
挑戦者 ディアナ・プラザック(オーストラリア)

 鍛え上げたアスリート同士が全力で相手を倒しあうリングスポーツでは宿命とも言えるリング上の事故、リング禍がWBC女子のタイトルマッチで起こってしまいました。その試合の動画と現在までの経過をお伝えします。

 試合はWBCスーパーフェザー級チャンピオンのフリーダ・ウォルバーグ選手のベルトにオーストラリアの強豪ディアナ・プラザック選手が挑戦した10回戦。6月14日のことでした。

 ウォルバーグ選手はアマチュア時代にスウェーデン代表として活躍し、世界大会で金メダルに輝いたボクシングエリート。プロ転向後も11戦全勝を誇る実力派のスター選手。

 ボクシング禁止論が勢力を持ち、30年以上もプロボクシングが禁止されていたスウェーデンで、ここ数年前からプロ公式戦が解禁され、さらに世界タイトルマッチがおこなわれるようになったのは、海外で活躍を続けていたウェルバーグ選手への絶大な人気があったからです。

 王者ウェルバーグ選手にとって3人めの挑戦者となるディアナ・プラザック選手は、IT関連の実業家として成功してからボクシングを始め、世界のトップ戦線にまで躍り出た異色のハードパンチャー。昨年12月の試合では階級を上げてパウンド・フォー・パウンド女子最強と言われるホリー・ホルム選手(アメリカ)に挑戦して敗れましたが、今回は自分の本来の体重に戻しての挑戦です。

 試合はご覧のとうり、非常に激しい闘いとなりましたが、序盤から優勢を保っていたのはチャンピオンのウォルバーグ選手。自由自在なフットワークと豊富な拳種で挑戦者を寄せ付けません。まさに世界王者のボクシング。ウェルバーグ選手はポイントリードを重ねます。

 しかし、第7ラウンド、プラザック選手の放った右がクリーンヒット。そこから下がり始めるチャンピオン。挑戦者はセコンドのルシア・ライカーさんの「上下に打って足を止めろ」の指示どうリにボディーを効かせて攻勢。

 第8ラウンド、フットワークを止めてリング中央で打ち合いに応じたチャンピオンのアゴをプラザック選手の強烈な左フックが襲います。

 ウォルバーグ選手は仰向けにひっくり返ったものの、しっかりと立ち上がって試合再開。しかし、今度は右の直撃を受けて2度目のダウン。レフリーはカウントをしないでストップを宣しました。ディアナ・プラザック選手、大逆転のTKO勝利です。

 プロキャリアで初めての黒星を喫したウォルバーグ選手はレフリーに連れられてコーナーのドクターのもとへ。ドクターのチェックの結果は異常なし。しかし、自陣コーナーに帰ったウォルバーグ選手はロープにもたれかかってぐったり。

 駆け寄ったプラザック選手とライカーさんが心配してウォルバーグ選手の顔を覗き込みますがドクターは自分の席に帰ったまま。動画の終わりのほうでライカーさんが「ドクター!」と叫んで、やっとドクターがリングに上がります。このあとウォルバーグ選手を担架で運び出すよう指示したのもライカーさんのようです。

 そして救急車で搬送されたウォルバーグ選手は即座に開頭手術を受け、いまもまだ病院にいます。経過は良好で、現在は意識はハッキリしていて、ネットに自身の状況を報告出来るまでになりました。「体が石のように重いです。吐き気と頭痛がしますが、一番つらいのは6才の娘に会えないことです。早く家に帰りたい。」

 一部では復帰を含めた楽観論も出始めた今回の事故ですが、頭部のダメージを軽く見てはいけません。今回は経験豊富なライカーさんがコーナーにいたから事故後の初動が適切に出来ましたが、そうでなければどうなっていたか分りません。

 スウェーデンでは今回の事故を検証する作業が行われているようですが、動画で見る限りはレフリーの判断は適切で、なんの間違いもありません。それでも事故が起こってしまったのはプラザック選手のパンチがケタ外れに強烈だったためです。これは不可抗力でしょう。

 問題は、長い間ボクシングを禁じていたために、現地にはボクサーのダメージを正確に把握出来るドクターがいなかった、ということです。

 この事件をきっかけに、再びスウェーデンではボクシングが禁止されることになるのでしょうか?

 そうなるかどうかはまだ分りませんが、ハッキリしているのは、今回のような事故にあったボクサーは回復してもスウェーデンの規定ではリングに上がることは出来ないということです。事故からの復帰後のメディカルチェックで異常がなければリング復帰を認めている国もあり、このへんの基準には国際的な統一はないようです。

 試合そのものは大変素晴らしく、ファンの記憶に永遠に残る劇的な好試合。ハイレベルな防衛戦を見せてくれたウォルバーグ選手と、新チャンピオンの豪腕プラザック選手に心からの拍手をおくります。ナイスファイトでした。ありがとう。

WBCスーパーフェザー級タイトルマッチ 10回戦
×王者 フリーダ・ウォルバーグ(スウェーデン)
TKO第8ラウンド
○挑戦者 ディアナ・プラザック(オーストラリア)
ディアナ・プラザック選手がTKO勝利で新王者となりました。
(ウォルバーグ選手は第8ラウンドにダウン2)

この試合を含む両選手の戦績は以下のようになります。
フリーダ・ウォルバーグ(スウェーデン)12戦11勝1敗2KO
ディアナ・プラザック(オーストラリア)14戦12勝2敗8KO

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コメント

  1. 行くぜ!格闘少女! より:

    凄い試合ですね。これぞ世界戦という感じですね。

    対戦相手のライカーさんが相手を気遣ってるシーンに感動しました。

    女子キックの選手でやけに負けがこんでる選手が結構いますが、こういう人たちは体にダメージが蓄積されていないのかなと心配になります。女子格闘技発展のためにもケアには十分配慮していただきたいと思います。

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