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葛城明彦レフリーの誤審(高野人母美第3戦)に思う 安易なレフリーストップが壊す試合の価値 ボクシング女子

 Boxing

 ボクシングは、判定あるいはKOで勝ち負けが決まるスポーツです。

 けれども、ふたりの人間が争えばどちらかが勝ってもう一方が負けるのは、ある意味当然のこと。ですから、ファンにとっては勝ち負けそのものはもちろん、場合によってはその内容のほうが大きな価値を持ったりします。「負けたけど良い試合だったね」とか「負けたけど気持ちは伝わったね」という感じに。

高野人母美選手

 ですから選手も、たとえ負けが見えていたとしても最後まで試合を頑張ります。いま、自分が持っている能力を精一杯出そうと努力します。

 試合というものには勝ち負け以外にそういう側面もありますから、レフリーはむやみにそれを止めていいものではありません。

 レフリーストップになった瞬間に、ジャッジがつけた採点もなにもかもがチャラとされてTKOになるのですから、止めるのにはそれ相応の理由があるべきです。

 両選手の実力に開きがあり過ぎて逆転の可能性が少なく、なおかつそれ以上の続行が危険である、とか、ダメージがヒド過ぎるとか、一方が無気力で試合が成立しない、とか。本来はそういう場合のみにTKOは成立します。

 9月30日に葛城明彦(かつらぎあきひこ)レフリー高野人母美選手とジプリン・デリーマ選手の試合を途中で止めました。

 その時の理由はなんだったのでしょうか?大々的にメディアで話題になっていて、それを目当てにチケットを買ったお客さんもいたであろう試合を、開始後1分にも満たない、たったの43秒で止めなければならないような切羽詰まった理由とはなんだったのでしょうか?

 高野選手はデビュー3戦め、デリーマ選手は1戦めで、どちらかが天才というわけでも他種目格闘競技の経験者というわけでもなく、危険と思われるほどの実力差はないでしょう。ダメージも無気力も感じられません。普通に見て、あそこで止める理由はありませんでした。

 唯一考えられるのは、開始30数秒でデリーマ選手が横を向いたことが「戦意喪失」と見なされた可能性です。

 昨日そのように指摘したあと、ネットを検索したら、まさに「戦意喪失」と断定する記事が速攻でアップされていました。こちらです。43秒TKO勝利のモデルボクサーの闘争心

 つまり、その記事を書いた人も戦意喪失以外の可能性は無いと見ているわけですが、では、デリーマ選手が横を向いたのは戦意喪失だったのでしょうか?

高野 VS デリーマ ロープを背負ったデリーマ選手は左側の方にエスケープしようと重心を移します。ちょうどそのとき顔の右側を打たれました。そして、左に回転しました。右側を打たれたら左に向くのは自然の流れです。

 普通に考えてデリーマ選手は単に横を向いただけであり、それには意味などなかったでしょう。お世辞にも華麗なステップではありませんでしたが、それは逃げる技術の未熟とは見えても「戦意喪失」と決めつけるのはあまりにも大げさでしょう。

 選手が踏み出す方向に向きを変えたり、パンチを受けて回転することなどボクシングでは当たり前に起こることです。

 この行為が戦意喪失による試合放棄に見えるのなら葛城レフリーの判断力には大きな問題があります。

 また、「高野人母美の猛ラッシュにフィリピンから来たジペリン・デリーマは思わず横を向いた。完全な戦意喪失。」と葛城レフリー弁護の文章を発表したライターさんの眼力、そして記事の方向性も疑問です。

 このライターさんはデリーマ選手のことを「このフィリピンボクサーは、日本では、女子プロのライセンスが降りるかどうかも怪しいくらいの低レベル」とズタボロに決めつけていますが、この文章は彼の観戦経験の乏しさ、見聞の狭さを裏付けているようです。

 なぜなら、デリーマ選手にも及ばないもっと未熟な選手は日本にもいるからです。確かに背の高い相手を打とうと伸び上がってパンチを放つ彼女の姿は不格好で、技術も高くはありませんでしたが、わざわざ特筆すべきことではありません。

 彼女をヒドイと言うなら、タイから来るカマセ選手はいったいどうなんでしょう?

 完全な戦意喪失とは、打たれてないのにダウンする、自分からしゃがみ込む、真後ろを向いて逃げる、など、カマセのタイ人ボクサーによく見られる傾向のことで、今回のように打たれて横を向くことではありません。

 このライターさんはそういう試合に立ち会った記憶がないのでしょうね。取材でタイトルマッチなどはご覧になっているようですが、それ以外のことも語りたいなら地味な大会にも足を運ぶことをお勧めします。

 「美しい顔」の「モデルボクサー」が「低レベル」の「戦意喪失」ボクサーに勝った、そんな記事が誰かの心に何かを届けますか?

 誰のためになる記事ですか?少なくても高野選手にとっては良い記事では無いと思います。

 ここは、結果に沿うように記事を書くという日本のスポーツマスコミの習性のとおりにレフリーの判断を弁護するのではなく、間違った判断は間違いと指摘し、二度とあのようなつまらない止め方で選手や関係者やファンを失望させるレフリングを繰り返さないよう大会運営にクギを刺すのが本来のスポーツマスコミの使命ではないでしょうか。

松島利也子 VS 花形冴美
 葛城レフリーは2009年に、松島利也子(まつしまりやこ)選手と、花形ジムのホープ花形冴美(はながたさえみ)選手の試合も、意味不明なレフリングで止めています。

 止められて不可解な表情をする両選手の姿は、今回とまったく同じでした。

 モデル/タレントからボクシングに転向して来た松島選手は初戦で打ち込まれてレフリーストップの黒星、この2戦めでも非力な印象は否めませんでしたが、一生懸命にコーナーの指示を動きに反映させ、練習通りのボクシングを見せようとしている姿は好感が持てました。

 前回TKO負けの松島選手にとっては、たとえこの試合は勝たなかったとしても4ラウンドまで完走して判定に漕ぎ着けることは大きな自信になったでしょう。そしてそれが出来る試合展開でした。第3ラウンドになっても松島選手のディフェンスが崩れる気配はなく、危険のキの字もありませんでした。

 しかし、葛城レフリーは、花形選手の当たりそこねのオープンブローがポコンと音を立てると突然飛んで来て試合を止めました。

 この試合を最後に松島選手は事実上の引退をしています。

 昨日のTKOのあとから、高野選手に関して良くない噂が流れました。
「プロテクトされている」
「はじめから出来レースだ」

 まともな試合だったらこんなことは言われなかったでしょう。

 レフリーの仕事は試合を壊すことではありません。成立させることです。反省してください。

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コメント

  1. 八雲 より:

     はじめまして。八雲と言います。
    いつも、記事を楽しくも興味深く拝見させてもらっています。
     今回の記事に関して、レフリーの不可解なレフリーストップに関しては何回か、このブログでも取り上げられていますが、このような試合のレフリングは女子ボクシングの選手達のレベルアップにも影響すると思います。
     すぐに試合を止められると勝った選手も「ああ、こんなもんで勝てるのか。」「一発、見栄えのするパンチを当てれば勝てるのか。」と思い、レベルの向上もあり得ないと思います。
     たしかに相手と殴り合うボクシングは危険を伴うスポーツでもあると思いますが、そのことを覚悟して選手たちも必死に戦っているのですから。すこしでも、まともなレフリングを期待します。

  2. みつば より:

    記事を読む限りではストップするような状況には無かったようですが、映像を見ていないのでなんとも判断がつけられないのがもどかしい。
    このレフリーは以前にも不可解なストップがあったのですね。知りませんでした。
    こうなるとレフリーの技量不足なのかプロテクトなのかも判断がつけづらい。

    また指摘されている記事をリンク先に飛んで読んでみたのですが、う~ん、どうせいいかげんなスポーツ新聞の御用記者だろうと思ったら、ボクシング関係でも著名な方じゃないですか、スポーツライターぽくない記事で驚きました。記事を読んでみて10月下旬にモデルの大会が予定されているということで、顔を傷つけられる前に試合をストップしたのを疑ってしまった。

    高野本人のやる気が間違いなさそうなのは救いですが、モデルとボクシングの兼業ってかなり難しそうですね。
    ケイティー・テイラーのように実力がついてくれば女子ボクシング界の救世主となる可能性もありますが、そのためにも周りは変な気を使わないほうが後々本人のためもなるかと思います。

  3. みやび より:

    八雲さん、私も同じくです(__)

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