観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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「事実をもとにした映画」のかんじんの部分はたいていウソ 真実を歪める『バース・オブ・ザ・ドラゴン』

 「実話をもとにした」ことを売りにした映画って多いですよね。「事実をベースとした」とか「事実からインスパイアされた」とか書き方は色々ですが、しかし、こういった類の映画で本当に事実をきちんと描いているものはほとんどありません

 たとえば、対ロシア戦争を想定して青森県の雪山で訓練をしていた日本陸軍の部隊が吹雪に身動きができなくなってほとんど全滅してしまうという実話を描いた『八甲田山』。

 映画では同じ時期に八甲田山の踏破訓練をしていた部隊がふたつあり、どちらが先に着くかと競っていたために片方の部隊が無理をしすぎ、それが遭難の一因となります。

 しかし現実には二つの部隊は競争などしていませんでした。単に偶然に同じ時期に似たような訓練をしていて片方が遭難しただけなのです。

 こういう肝心の部分が作り話って、ダメですよね。

 で、わがQRが心の師と仰ぐブルース・リーさんの伝記映画は何本もありますが、これも全部ウソばっかり。

 ハリウッドで作ったやつでも中国で作ったやつでも、無茶苦茶なガセが多すぎです。

 『ブルース・リー伝説/李小龍傳奇』というテレビシリーズはリーさんの実の娘のシャノン・リーさんが製作総指揮/監修ということになっていますが、これもヒドい作品。

 たとえばリーさんの脊椎のケガのこと。本当は無理な自己トレーニングで背中をいためたのですが、この作品の中では決闘の相手に負けての大ケガということになっています。

 本当に娘さんが監修してたらこんなガセネタは入れないでしょう。そのほかの部分もほとんど全部ウソです。

 シャノン・リーさんはこのあとに「ちゃんとした本当のブルース・リーの映画を撮りたい」と言っています。いままでに作られたその手の映画は全部いんちきですから、娘さんがそう思うのは当然です。

 結局、監修なんて名前ばかりで、現実には「ウケそうなほう」「作りやすいほう」に内容は曲げられているのです。

 1970年代に作られた戦争映画で『遠すぎた橋』というのがありました。第2次大戦の映画で、進撃を急ぎすぎたアメリカ軍、イギリス軍が作戦を失敗して退却する話で、ものすごい制作費、大スターをずらりとそろえた豪華なキャスト、そして、実際にこの作戦に参加した軍人さんの『特別監修』を受けた戦闘シーンのリアルさが宣伝文句になってました。

 しかし、見てびっくり。全然お子ちゃま向けのゴミみたいな映画で、リアルでもなんでもありません。

 たとえば、敵の占領する橋に無警戒で接近する素人みたいなイギリス軍エリート空挺部隊のシーンがこれ。当然、ハチの巣にされて逃げ帰ります。

 このほかにも、せっかく装甲車に乗っているのに上半身を乗り出したままで撃ち殺されるバカなドイツ軍将校とか、ありえない描写がテンコ盛り。プロの軍人の戦闘にこんなことがあるわけないじゃないですか。ノーガードの格闘技以下です。あきれて途中で見るのをやめました。

 あとで映画雑誌を読んで驚きました。その映画の監督だったかカメラマンだったかがこんなことを言っているんです。軍人に現場に来て見てもらったが「そんなに戦車を近距離に並べるんじゃ無い。それじゃ、いっぺんに全部やられてしまう」とかウルサクて困った・・・

 それで軍人さんの言うことを無視して作ったからあんなくだらないものになってしまったんでしょうね。でも、 これを傑作と呼ぶ人がたくさんいて、人類の未来が不安になります(笑)。

 「実話」の映画なんてこんなものです。

 新しいリーさんの伝記映画が近日公開だそうですが、これも海外の映画祭で上映されて相当ヒドい出来であることが確認されているようです。上の方の動画がそれです。

 実在の武術家ウォン・ジャックマンさんがリーさんの道場に乗り込んで手合わせをしたという史実がネタになっているのですが、予告編からしてウソくさくて笑っちゃいました。

 その手合わせを見た人は、本人たち以外にお互いの立会人ひとりづつ。つまり、ほとんど目撃者無し。だからといってこんなマトリックスみたいなもん作るとは・・・。武術をなんだと思っているのかな。

 実在の人物を面白おかしく善玉と悪玉に色分けして、勝手に話を作るなんて許せることではありません。二人の東洋の武術家の物語を、何十年もあとになって、武術にも東洋文化にも関係の無い白人が、お金もうけのためにハナっから子供だましの安っぽい映画にするなんて・・・。気分が悪い。

 やっぱり、早死になんてするもんじゃ無いですね。

 現実には何分間かの対戦ののち、ウォン・ジャックマンさんが「スリップダウン」し、立会人が「それまで」と止めた、という話しか確認されていません。

 あとは周辺のひとが話を膨らませたり、こっちが勝った、いやこっちの勝ちだ、と言い合ってるばかり。本来なら、地味すぎて、とてもアクション映画になんかできるようなネタではないんです。

 実際に間違いない話は「この手合わせの後でリーさんは深く深く考え込み、それまでの自分の格闘スタイルを解体して作り直し、ジークンドーを創出した」ということだけです。

 リーさんがそこまで自分の武術を見つめ直すきっかけとなったということは、相手のウォン・ジャックマンさんは相当な使い手だったということでしょう。

 しかし、「ウォン・ジャックマンのほうが勝っていた」という説もあるのですが、それは有り得ないです。

 だって、ノールールの武術家対決に「スリップダウン」などというものは無く、実戦だったらどんな理由にしろ「倒れたら負け」だからです。中国武術の人は絶対に倒されないのが基本なのです。

 また、「リーは目潰しや金的狙いで汚かった」という説もネット上にはあるようですが、それは西洋格闘技の人の価値観で、中国武術の人はそんなことは言いません。ウォン・ジャックマンさんも、そのまわりのひとも、決してそんなことは言わないはずです。実戦武術に反則なんてものは無いからです。

 というわけで、いつも書いていることですが、世の中はウソばっかりです。そこらに転がっている目に付きやすい話はほとんど全部がウソです。騙されないように自分を磨きましょう。

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