Boxing
今月3日にトリプルメインイベントのひとつとして、アリージャ(アリシア)・グラフ選手の試合がドイツ国営テレビで放送されたことは先日書きましたが、10日には地上波民間テレビ局の『プロジーベン』がスージー(スジアンナ)・ケンティキアンの試合を放送します。完全なメインの扱いで、生中継です。このテレビ局は2007年から、同局の目玉のひとつとして、ずっとスージーの試合を放送しています。
スージー・ケンティキアンは現在まだ20才ながら、すでにプロ戦歴20戦全勝、そのうち15のKO勝ちがあります。
彼女はアルメニア生まれですが、生まれて1年後に、お隣の国、アゼルバイジャンと全面戦争が発生、その後も戦争は収まらず、家族に軍の召集令状が来たので、一家はアルメニアを離れます。その時スージーは5才でした。そして、二、三ヶ国を転々とすることになったケンティキアン一家がハンブルグに落ち着いたのはスージーが9才のころ。
お兄さんの影響で、12才からボクシングを始めたスージーは、優秀なアマチュア戦績をあげ、17才でドイツアマチュア選手権ジュニア部門で優勝、プロの関係者から認められるようになりました。その間、スージーは学校に行きながら、家族の生活のために、清掃作業の仕事でお金を稼ぎました。
プロ契約をゲットしたスージーは、2005年1月に女王レギーナ・ハルミッヒの前座で、かつてレギーナがそうであったようにティーネイジャー・ボクサーとしてデビュー。引き続きその年には、ほとんど月イチのペースで試合をしてKOの山を築きましたが、彼女の実績からすると勝って当然の相手ばかりだったかもしれません。しかし、2006年には元WIBA王者マリベール・ズリタを破る金星で実力を示し、2007年にはWBAフライ級チャンピオンになり、現在まで5回の防衛に成功しています。
スージーは身長154センチ、ドイツで最も小さいプロボクサーとして知られ、その苦労いっぱいの生い立ちにもかかわらず、非常に明るいキャラクター、しかも、女王レギーナの妹分という業界内の位置付けもあり、ドイツ国内ではものすごい人気があります。ボクシングを見ない人でさえ、レギーナ・ハルミッヒとスージー・ケンティキアンを知らない人はいません。人気ヤングアスリートとしてはもちろん、メディアではそれ以上の存在と言えるでしょう。
しかし、2月の試合では解説席のレギーナに「勝ちましたが、まだまだです」とプロとしての試合運びにダメ出しをもらってしまったスージー。今度の試合は、40戦のキャリアで4敗しかしていないマリー・オルテガを相手に、どんな試合を見せることが出来るか、ちょっとした試練になるのではと言われています。
JBCが認める女子ボクシングの王座であるWBA、しかも、日本選手の守備範囲であるフライ級の世界タイトルマッチ。いずれは誰かが挑戦するベルトです。日本のファンとしても目が離せない一戦になるでしょう。
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