Boxing
猪﨑かずみ選手(花形ジム)への引退勧告が話題になっているようです。
しかし、本人に続行したい意志があり、肉体的コンディションには問題が無く、今日現在のランキングがWBC5位(自己最高順位)という世界的に好評価の選手が、どうして今すぐ引退をしなければならないのでしょうか?
それは事実上日本国内のボクシングを仕切っているJBCさんがボクサーの年齢制限を定めているからです。この規定によって、通常、37才になった選手は引退することになっています。
しかし、世界の女子ボクシングの流れに押し流されるカタチで女子ボクシングをはじめたJBCさんは、女子の公認スタートの遅れによる深刻な女子選手不足という事情があるため、30代後半や40代の女子にも積極的にボクサーライセンスを公認してきました。
また、37才引退規定は、男子であっても「元チャンピオンや実積がある選手は例外」とするものなので、元日本チャンピオンである猪﨑選手にはライセンス継続の資格があり、現在まで年齢が問題になることはありませんでした。
それが今回の引退勧告になったのは猪﨑選手が昨年11月の試合で負けたためです。JBCさんの年齢規定のチャンピオン特例や女子特例は、その条件として「一度負けたら特例取り消し」という内規があるらしく、猪﨑選手以外にも横関夏芽選手(緑ジム)が1敗を理由に引退勧告を受けています。
しかし、きのうまでJBC公認プロボクサーだった選手がきょう1回負けたからという理由で、あしたからはボクサー資格を失うということにどういう意味があるのでしょう?勝ち負けが安全性と直結するわけでもありませんし、ずっと勝ち続けるスポーツなんかありません。勝ち負けがあるからこそ競技は成り立つのですし。
女子が少ないから特例を認めます、チャンピオンには続けてほしいから特例を認めます、と引き込んでおいて一敗を理由に切り捨てるのは無責任すぎるでしょう。
特に猪﨑選手の場合は、本人には関係のない部分でいろいろな事情があって1年以上も試合間隔があいてしまったあとの1敗です。そんなにブランクがあってコンディションや試合カンを保てというのは無理です。
試合間隔があいたのはWBC世界タイトル挑戦の予定が不可解な理由で流れたことが原因ですが、そのキャンセル騒ぎのときにJBCさんは猪﨑選手を後押しする声明のひとつも出していません。
一部報道と事実は違いWBC世界戦に年齢制限はありません。WBC会長も猪﨑選手の世界挑戦に問題無しとの認識だったようです。そして、猪﨑選手は技術・健康面のJBCさんの審査をすべてパスした公認のボクサーですから、あのときJBCさんがプッシュしてくれれば猪﨑選手の世界挑戦は実現出来たでしょう。
キャンセルは、WBCの意志でも決定でもありません。もともとチャンピオン陣営が猪﨑選手を指名してきたのですから、実現には何の障壁もありませんでした。それが消えたのは、猪﨑選手の世界挑戦を横取りしたい勢力の意志だったと思われます。
まあ、過ぎたことの真相がどうにせよ、あのような状況のときにJBCさんがなんの援護もせず、頼りにならなかったのは事実で、日本のボクサーの味方ではないのかなと思いました。大事な時に応援はしなかったけれど切り捨てはするのですか?
クルム伊達公子選手や岡崎朋美選手の活躍に人々が共感するのは、スポーツの大きなテーマのひとつ「年齢への挑戦」があるからです。JBCさんは全然わかっていないようですけど、猪﨑かずみ選手にも世の中の人は強い関心を持っています。
うちのブログの記事で一番アクセスを集めるのは、女子高生ボクサー黒木優子選手でもなく、WBC王者富樫直美選手でもなく、WBA王者多田悦子選手でもありません。圧倒的に猪﨑かずみ選手です。これが現実なのです。日本の女子ボクシングは求心的な柱という意味でも、実力派世界ランカーという意味でも、この人を必要としています。
しかし、続行にしても引退にしても、キーになるのはご本人の意思。わたしたちファンは身勝手ですし、JBCさんも身勝手ですから。ご本人のやりたいようにやればいいのです。勧告なんて余計なお世話ですよ。
それから、誤解している人が多くいるようですけど、JBCさんの引退勧告は「JBCさんからの」引退の意味でしかありません。また、猪﨑選手は今までボクサーをやめるとは一度も言ってないと思います。
というわけで、ボクサー猪﨑かずみがんばれ!
書くべきことはまだまだありますが、今日はこのへんにして、猪﨑選手と同世代のアメリカ人女性(ボクシング元世界王者)の言葉をご紹介しましょう。
「ボクサーにとって大事なのは実年齢ではなくてボクサー年齢です。
カズミ・イザキはまだデビューからは数年しかたっていないからボクサーとしては若い。
わたし自身は今でも強いけど長い間戦ったので試合は引退しました。
でも、カズミは引退の必要はない。まだ心に牙があるから。それが大事なことです。」
★40代プロボクサーひとことメモ
女子では昨年WBCライトミドル級王座を41才のクリスティー・マーティン選手(アメリカ)が獲得。
ミア・セント・ジョン選手(アメリカ)は41才でWBCライト級インター王座防衛戦に敗れましたが、今年3月には42才9ヶ月でWIBFライト級王者に挑戦することが決まっています。
男子では47才のイベンダー・ホリフィールド選手が来月フランソワ・ボタ選手とWBFヘビー級タイトルを争います。
猪﨑かずみ選手「まだ自分ではボクシングをやりたいし、できると思っている」(スポーツ報知)
46歳猪﨑が引退「もう一度やりたい」(サンスポ)
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コメント
今回の件もそうですが、JBCにはもっとしっかりして欲しい面がありますよ。今ボクシング界は某一族に振り回されてるの現状です。去年の大一番でタイトル奪取したものの、今後は下位ランカーとの防衛戦ばかりになる可能性大ですし、父親のセコンド復帰を認可したら、それこそ思うツボにハマるだけですよ。猪崎さんだってまだやる気があるのですから、簡単に引退勧告する事はおかしいですよ。JBCはもっとしっかりして欲しいです。
通常は32歳までにしか認めないボクサーライセンス受験を、女子不足だからと年齢規定を無視して30、40を大幅に越える女子ボクサーを量産した日本ボクシングコミッション。
そんな大甘な勧誘をしておいて、今度はたった1度の敗北でライセンスを取り上げ、あるいは負けなしでもライセンスの更新を拒んで次々に引退に追い込んでいる大辛さ。
彼らのやることはブレまくっていて理解できません。
あの人たちには何を望んでも無駄でしょう。
行き当たりばったりとはまさにこのこと。
なぜここのブログは猪崎さんだけ特別扱い?それが不思議。むしろ本人が仕方なしでも承諾した以上は事を荒立てることをしない方がいいんじゃないの?それこそナンセンスかとw
正直あのままじゃいつかは五体満足でいられなくなる気がするし(家庭・以後の生活を考えると・・・)コメント書いてる人がこだわるプロでなきゃいけない理由がわからない。
横関さんだってプロから外れても真摯にボクシングと向き合ってるんだし、試合はアマチュアでも出来るんですから。
むしろ、プロでなきゃいけない理由が知りたい。
ボクも年齢的に猪崎さん世代でボクシングを始めましたが、プロでなくとも充分ボクシングを堪能しています。
過去にお世話になったジムでプロとして(山木時代)女子ボクサーだった方とも接しましたが、ライセンスが無くなって辞めるか?と聞いたら 逆にもっと続ける、ボクシングが好きだから♪と言われました。
ですからボク的には静観視、むしろ違う形で頑張ってください!と思ったりするのです。
コメントありがとうございます。
>猪崎さんだけ特別扱い?それが不思議。
横関選手の引退勧告の時も書いていますよ。
仮に猪崎選手を特別扱いしているように見えたとしてもファンがやっているファンブログなので不思議はないでしょう。
>プロでなきゃいけない理由がわからない。
>むしろ、プロでなきゃいけない理由が知りたい。
プロでなきゃいけないとかだれも書いてないですよ。
>ですからボク的には静観視、むしろ違う形で頑張ってください!
違う形で頑張ってもらいたいんですね。
そういう希望の表明は静観ではないですよ。
本文の繰り返しになりますけど、
続行にしても引退にしても、ご本人のやりたいようにやればいいのです。ファンは身勝手ですし、JBCさんも身勝手ですから。
きょうの記事は「ひとりの立派なおとなの人に、誰かが自分の考えや好みや価値観を押し付けることがナンセンス」という趣旨で書きました。
それに、いままでの経緯の説明をくわえました。
関心を持ってくださる人の理解の助けになれば幸いです。
QRは男子でも女子でもチャンピオンでもそうじゃなくても、引退の時期は選手自身が決めるものだと思っています。
引退しろ、続行しろ、アマになれ、プロでやれ、どれも大きなお世話です。
体張ってやっているのは選手です。
プロボクサーの37才定年というJBCさん独特の規定も、引退勧告という習慣も、全部見直す時期に来ています。