Boxing
2010年2月20日(土)東京 後楽園ホール
OPBF東洋太平洋スーパーフライ級タイトルマッチ
王者 藤本りえ(協栄)
VS
挑戦者 山口直子(白井・具志堅)
ふたりは4回戦時代の2004年に一度グローブを合わせ、その時は山口選手がTKOで勝利しましたが、2010年のこの日、藤本選手が東洋太平洋チャンピオン、山口選手は挑戦者という立場で数年越しのリマッチが実現しました。
藤本りえ選手の武器は強敵に対しても一歩も引かずに向かっていく強いハートと、正確な右ストレート。そして世界戦を含む過去3回のタイトルマッチという経験値。
対する山口直子選手は、レフリーの早過ぎる不適切ストップで負けにされた対四ヶ所麻美戦を除けばJBCでは圧勝続き。負けらしい負けとしては2003年の対早千予戦があるのみという日本ボクシング界屈指の強豪。しかも、直近の5勝はすべてKO勝利の完全な「倒し屋」です。
王者、藤本りえ選手は初防衛戦で最強の挑戦者を迎えました。
初回、オープニングヒットは山口選手のスピード感あふれるジャブでした。ふたりとも軽いフットワークで動きながらの軽快なボクシング。
互いのスピード感やパンチ力を確認し合う威力偵察という感じのラウンドで、パンチのヒット率は互角。どちらもコンディションは良さそうです。
2回、ジャブでの牽制が続く両者。1分過ぎに山口選手がリング中央でラッシュを仕掛けます。上下左右に打ち分ける見事な動き。藤本選手は鋭いジャブで応えますが、山口選手の圧力に押されて右ストレートにつなげる余裕がありません。山口選手のラウンド。
3回、山口選手が左右のフックなどで強いプレッシャーをかけてきます。
しかし、40秒に藤本選手が左で上段をガードしながら山口選手のフトコロに飛び込んで右のボディーストレートで強襲。続いて顔面へストレートを当てると、山口選手は2、3歩バックステップ。圧力が弱まったところで藤本選手がワン・ツー、続いて左右のフックなどで攻勢。
山口選手はするどい左で防戦しますが、終盤にも打ち込まれ、このラウンドは王者藤本りえ選手が死守。
4回、開始直後に不意を突かれる感じで藤本選手のストレートをもらってしまい、よろけながら後退する山口選手。
状況を打開しようと積極的に打ちながら出て来る山口選手のフック、アッパーが連続で命中し挑戦者がペースを握ったと思われたその時…
わずかのスキを逃さず藤本選手のワン・ツーがクリーン・ヒット。
山口選手、背中からマットに着く完全なダウン。藤本選手は右手でガッツポーズを作ったあと、ニュートラルコーナーへ。
4回終了時のオープンスコアは38-37でジャッジ全員が藤本選手を支持。
5回、動きの中から時おり打ち出すコンパクトな連打は迫力充分ですが、やや相手を見てしまう感じの山口選手。
藤本選手の右のクリーンヒットを受ける場面が2度、3度とあります。
6回、アッパー、ボディー、フックを巧みに織り込んだ山口選手のコンビネーションが決まりはじめると、徐々に藤本選手が主導権を空け渡し、試合は山口選手のペースに。
7回、前半はお互いによく動いて打つタイミングを与えませんでしたが、1分過ぎに藤本りえ選手のワン・ツーが炸裂。
これに対し、山口選手は左のダブルから接近戦に持ち込んで鮮やかな右アッパーカット。
これは効いたかと見えますが、なんとか持ち直して反撃する藤本選手。
オープンスコアは67-65でジャッジ全員が山口選手を支持。これを聞いた会場は悲鳴と歓声。
8回になっても山口選手の左の威力はまったくかげりを見せず、藤本選手はだんだん山口選手に近づけなくなってきました。
山口選手のパンチは破壊力充分ながらも軌道はコンパクト。しかも肩に力が入っていないのでスピードも抜群。後半になっても持続するスタミナ。実に見事です。
9回、山口選手の左は相変わらずの猛威を見せ、藤本選手はなかなか手が出せません。
顔面へのストレートでのけぞらせたり、ボディー打ちで「く」の字にしたり、もはや完全に山口選手のペース。
しかし、山口選手の左と刺し違えるかたちで突進した藤本選手はワン・ツー・スリーと叩き込んで、一瞬、山口選手がフリーズ。
けれども、これで体力を使い果たした藤本選手は、山口選手の強烈な右ボディー、返しのフック、右ストレートの連打に反応出来ず、全弾をまともにもらってダメージ濃厚。
続いて右フック、ふらっと下がったところに右ストレートを被弾したところでレフリーが割って入り、壮絶なタイトルマッチに終了のゴングが響きます。
山口直子選手がTKO勝利でOPBF東洋太平洋スーパーフライ級新王者になりました。
OPBF東洋太平洋スーパーフライ級タイトルマッチ
×王者 藤本りえ(協栄)
9回1分55秒 TKO
○挑戦者 山口直子(白井・具志堅)
山口直子選手がTKO勝利でOPBF東洋太平洋スーパーフライ級新王者に
(山口選手は4回にダウン1)
*この試合の模様はTBSテレビ21日深夜2時20分からの『ガッツファイティング』で部分的に放送される可能性があります。
この試合の結果、両者の戦績は以下のようになります。
藤本りえ(協栄) 15戦9勝4敗2分4KO
山口直子(白井・具志堅) 18戦13勝2敗3分11KO
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コメント
テレビで見て大感動しました。出来ればノーカットで見たかった。でも、近ごろは世界戦でも放送がないから見れただけでも幸せ。