Boxing
吉例、2013年 クイーン・オブ・ザ・リング ボクシング部門 各賞の発表です。ことしのリングをさまざまに彩った選手の皆さんへの感謝の気持ちをここに表します。
なお、この賞はこの1年にQRスタッフの耳や目に入った試合からQRスタッフの主観で決定されたものであり、ボクシング女子全体を反映するものではないことをあらかじめお断りします。
この選手を見よう
前WBAミニマム級王者多田悦子(真正)
WBAライトミニマム級王者宮尾綾香(大橋)
WBAスーパーフライ級王者藤岡奈穂子(竹原&畑山)
まずは総評の代わりとして、いま見るべき上記の三人の選手について書きます。
多田悦子選手はアマからプロに転向したときからその実力を高く買われ、大活躍間違い無しと言われていましたが、ケンカ番長などと称されたイメージと違って、実際は時おり弱気な表情を見せる人でした。
世界のベルトを巻くようになってもパワーと決定力に乏しく、試合後には「こんな試合ですみません」と謝るのが通例。正直、期待はずれと思っていたのですが… 、昨年後半からは線の細さも克服され、堂々としたプロらしいボクサーになっています。
そして、3月の防衛戦では若手のホープ黒木優子選手(ユーケーオー)との試合で、力の差を見せつける盤石のファイトを展開。「王者はやっぱり違うんだ」ということをはっきりと示しました。チャンプとそれ以外の選手の違いがなんだかアイマイになっている現在の奇妙な日本のボクシング界ではその功績は大きいでしょう。
夏の防衛戦は落としましたが、あれは判定がおかしいだけ。とは言っても、過去には甘い判定で救われたこともあるのですから、これでチャラだと思って水に流し、また一人のボクサーとして暴れてください。本来のイメージ通りのボクサーファイターとして生まれ変わった多田選手に注目しましょう。
日本のボクシング女子に決定的に欠けているフットワークの有効性を防衛戦でも見せてくれたのが宮尾選手。ただまっすぐに追い続ける挑戦者は、宮尾綾香選手には絶対に届きません。
これは運動能力や根性論でどうなるものでもなく、相手と自分の動的位相の把握の能力ですから、空間理解のセンスを養うことが大事です。バスケットやサッカーなどのコンタクト系球技の出身者の方が他種目の選手よりもボクシングに向いているのはそのためでしょう。
「打ち合い」の前に、そうした空間の位置取りの戦いがあるのが、宮尾選手の試合の面白さなのです。
そして、藤岡奈穂子選手の試合は、ボクシングファンなら必ず見ておきましょう。藤岡選手はどこで相手を倒してしまうか、KOをしてしまうか予想もつかない試合をするので目が離せません。
日本の女子ボクシングにつまらないイメージがあるのは、チャンピオンベルトを巻いて目立った位置にある選手なのにKOどころかダウンすら取れないボクサーが多いのが原因です。ペチペチと軽いパンチを8~10ラウンドまで続けて「ハイ、地元判定で勝ち」というのでは馬鹿にされても当然。そんな退屈な試合は、本来ボクシングとはもっとも遠いものです。
藤岡選手の試合は面白いです。結果的に判定になったとしても、最初から最後まで何かやってくれそうな予感がずっと持続するので面白いのです。
毎回必ず倒すのは無理でも、倒すことを期待させるボクサーがいいボクサーなのです。それが藤岡選手や山口直子選手です。
また、倒せないまでも、見事なカウンターや、鮮やかなアッパーカットはボクシングの華ですよね。それが見れるのが宮尾選手や天海ツナミ選手の試合です。
QRはそういう基準でボクシングを楽しんでいます。
★ベストファイト
東郷理代 vs マリアナ・フアレス 第一戦[4月27日WBCスーパーフライ級インターナショナル王座決定戦]
昨年、わたしたちは「日本選手が海外に出て行き一番上の選手を一番追い込んだ試合」として真道ゴー選手がマリアナ・フアレス選手と戦った試合をベストに選びました。それと同じ視点で、今年は東郷理代選手がフアレス選手を一撃TKOでやぶった試合をベストに選びました。「日本選手が海外に出て行き一番上の選手を倒した試合」最高です。参考記事
★ブライテストホープ
ハニー・カツマタ(勝又)
藤満霞(関)
高野人母美(協栄)
★最優秀来日選手
グレッチェン・アバニール(フィリピン)
宮尾綾香選手のタイトル戦に挑戦者として迎えられたアバニール選手は、実際に見ると非常に小柄で、全体に細く、これがフィリピンの誇る名チャンプかと疑問に思いましたが、試合が始まってみるとまさに稲妻。速さに定評がある宮尾選手と同速のクイックムーヴ。カウンターの鋭さも一級。これぞスピードスターという感じで宮尾選手と張り合います。終盤は失速寸前まで追い込まれましたが、最後まで動き続けたファイティングスピリットはあっぱれでした。
★ベストKO賞
東郷理代(アルファ)[4月27日WBCスーパーフライ級インターナショナル王座決定戦]
問答無用でこの人、この試合です。まさしく快挙ですね。
★ファイター・オブ・ザ・イヤー
WBAライトミニマム級王者 宮尾綾香(大橋)
昨年、前王者を大差の判定でやぶって新王者となった宮尾綾香選手は、今年はほぼ4ヶ月に一回のペースで試合をおこない、3回の防衛戦を見せてくれました。ベルトを取ってしまうと半年にいっぺん程度しかリングに上がらないチャンピオンも多い中、宮尾選手は文字通りに『戦うチャンピオン』としてプロの仕事をしたと思います。
しかも、その防衛の相手は世界ランカーの秋田屋まさえ選手、前王者の安藤麻里選手、そして、フィリピンを代表する実力者のグレッチェン・アバニール選手という文句無しの顔ぶれ。試合内容も、危なそうなところを機敏さとひらめきでスルリと切り抜けてチャンスに変える宮尾選手独特のファイトスタイルで大いに楽しめました。
しかし、なんと言っても宮尾選手の魅力は一にも二にも「絶対に勝つ!」「どんなことをしても勝つ!」という闘志。フィジカルに恵まれているとは言い難い彼女が、世界の王者であるには内から自分を支える心の炎こそが最大の武器。その炎がメラメラと燃え上がるファイトをこれからも期待します。参考記事
コメント
今晩わ 年始年末のニュースを 対戦相手の質はともかく 年5試合戦ったセクシー&ファイティング王者 ボップが輝いてますね ただIガルシア同様 黒星がついての(※オーバーウエイト対戦ではない)タイトル保持に関して説明がほしいとこです そしてWBA 又々意味のないスーパー王座が復活しました
WBC Fe級 漸くアニオス ガーサイドと名誉王座が消えました(と思います笑)
故サランディ マーチン Lアリはいつ迄表示あるのでしょう・・
ブレンコ(WIBA LW級 WBFed W級) オリベラス(WBC SL級 WBO Fe級)と異団体2階級制覇王者がいます
マッカーター ラマダン キム・ジュヒそしてライカと 試合枯れ王者達の去就も気になるとこです
ベルムデスがWBO SF級王者についたことにより 5年間に渡る WBA SF級正規・暫定の並立に終止符が打たれました(アホらし笑)