WBCウェルター級タイトルマッチで王者ビクター・オルティス選手をKOで倒したフロイド・メイウェザー・ジュニア選手の行為が「フェアじゃない」ということで非難を浴びているようです。
でも、実際のところそんなに悪くはないでしょう。良くもないですけど(笑)。
4回の終盤、攻勢をかけてメイウェザー選手をロープに押し込んだオルティス選手はなかなかいい試合運びをしているように見えました。しかし、自分では思ったほどにはパンチが当たらずイライラしてたのか、突然低くかがみ込んでからジャンプをするように頭突き。これをまともに喰らったメイウェザー選手は唇の下をカット、血がにじんできます。
レフリーがいったん試合を止めてオルティス選手のバッティング減点をコールしたあと、試合再開の指示。通常なら両者はグローブタッチをしてからファイト再開となるところですが、オルティス選手は謝罪の意味なのかグローブタッチじゃなくてハグを求めてきます。メイウェザー選手もこれに応じますが、その離れ際に強烈な左を顔面に一撃、さらに右ストレートも決めてオルティス選手はダウン。そのまま試合はKO決着となりました。
もしもこれが謝罪のために近付いてきたオルティス選手にカウンターを入れたというなら悪いのはメイウェザー選手です。しかし、離れ際ですからね。これはもう戦闘中なんです。
実はこういうあいまいな離れ際に打つ打たれるというのはそんなに珍しいことじゃないんですが、たいていは当て損なったり、ガードされたりであんまり大事件にはなっていないだけ。メイウェザー選手はキッチリ決めちゃったんで目立っているんでしょう。
リングではレフリーがはっきりとブレイクやタイムをかけているとき以外は全部戦闘中です。それから、終了ゴングの直前や直後も。終了ゴングと同時に出された攻撃は有効なんですからゴングの直後まで警戒は必要ですね。
「そういう時に打つのはスポーツとしてダメではないか」という意見はあるでしょう。でも、こっちがダメと思ってもむこうがそう思っていない場合のために用心するのは当たり前です。
オルティス選手はあのシーン以前にも何度もバッティングを出していました。レフリーも注意していました。それでも出してきたヘッドバット、しかも顔の下半分を狙うヘッドバットですから弁護は出来ません。あれでメイウェザー選手がアゴや前歯や鼻骨を損傷していたら選手生命にかかわることになっていたでしょう。
反則があったのは4ラウンドでした。試合はあと8ラウンドもあります。こんな信用出来ねえやつとあと8ラウンドもやってられるか、とメイウェザー選手が考えたとしても無理はないでしょう。
メイウェザー選手は試合後に「リングの中では自分で身を守らなきゃならないんだ」と言ったそうです。そのとおりです。これはどんな格闘技にも共通する古くからの教えです。ミリオンダラーベイビーの中でも老トレーナーがそう言っていました。
お金を払って見に行ったファンはあんなものを見たかったわけではないのですから、そりゃあブーイングも出るでしょう。チケットも高かったでしょう。でも、選手の側になって考えてみたらそれほどメイウェザー選手は悪くないし、とにかく自分の身は自分で守らなけりゃならないんだ、という姿勢からは学ぶべきことは多いと思います。後味の悪い出来事ではありましたが。
コメント
今後メイウェザーに頭突きする選手はいないでしょう。
頭突きが選手生命にかかわるとありますが、棒立ちの相手に強烈な右ストレートは選手生命はおろか生命に関わる事も理解して下さい。
コメントありがとうございます。
でも「棒立ちの相手に強烈な右ストレート」は反則でもなんでもありませんし、よくあることです(ワンツーのワンで効いてしまったあとのツーなど)。
一方、頭突きは禁止です。
けれども、この記事の趣旨はどっちが悪いとかどっちが危険とかそういうことではありません。
自分で身を守れということです。
オルティス選手のようにならないためには
「頭突きはしない」「棒立ちにならない」ということです。
見ている方の無責任な立場としては、
「こんな決着つまらん」ということに尽きる、
というのが正直なところです。
しかもそこらの凡百のボクサーならともかく、天下のメイウェザーでしょう?
もう少し余裕というか何というか、そういったものがあってもよかったような。
まして試合後のインタビュー、あれはひどすぎる。
あれじゃただの街のアウトローにしか見えない。