Boxing Kick Boxing
女子のキックやボクシングが偏見なくファンの人たちに見てもらえるようになるには「面白い試合をする」ことが一番だと思います。そしてそういう試合の存在を知ってもらうことも大事です。
ですからわたしたちは試合のレポートをなるべく丁寧に書いたり、写真をたくさん載せたりします。動画をたくさん貼ったりします。
「どうして女が戦うのか」とか「試合の裏に隠れたストーリー」という切り口からは格闘技の面白さは伝わりません。それは格闘技の本質ではないからです。女が場違いなものに挑戦する、苦労と涙の物語、そんなものは格闘技じゃなくたって他にいくらでもあるじゃないですか。
格闘技の面白さはそういうことではなくて、そもそも、格闘技とはなにか?どうしてそれは生まれたのか?ということに関係があります。
結論から言えば格闘技は「強くないひとのために生まれた」のです。
何もやってなくてもナチュラルで強いひとってときどきいるじゃないですか。身体能力がすごかったり、規格外のボディーサイズだったり。そういうひとには格闘技はいらないんです。最初から強いんですから。
そういうひとじゃなくて、ごく普通の人、あるいは普通よりも弱い人のために生まれたのが格闘技、格闘術、マーシャルアーツだと思うんです。普通の人はナチュラルで強いわけではないから、戦う時には「技(ワザ)」や「術」や「アート(策)」が必要となってきます。そこが格闘技の出発点でしょう。
例えば、ボブ・サップさんみたいな人がやっているものは格闘技というより単なるパワー比べ、頑丈さ比べのフィジカルショーですね。ボクシングやキックには、時々そういう「格闘技じゃない人」が紛れ込んでしまいます。
なぜかというと、そういうショーを好む人も少なくないからです。そして、そういう世界が好きな人たちはあんまり女子格闘技には興味が無いかもしれません。それはそれでいいと思います。だって、女子はそういう方向には向きませんから。
一般論として、女子はナチュラルな状態では「格闘」には適しません。筋力や瞬発力がもともとあまりないからです。ですから、そこに「格闘技」の「技」「術」「策」の部分が大切になってきます。
もちろん男子の選手がみんなパワー頼りということではなく、素晴らしい技巧を持った選手がたくさんいます。でも、女子よりも男子はもともと格闘能力がありますから、せっかくの技術を徹底的に磨かないで、最後の部分ではフィジカル勝負に出てしまうようなこともあります。せっかくいい技術を持っている選手がなぜか途中から一発頼みのギャンブルファイトになっていたり。そういうのは格闘技ファンとしてはとっても残念。もったいなくて、けっこう凹みます。
サッカーでも同じようなことが言えます。フィジカルで諸外国に劣る日本のサッカーの生きる道は、つないで、回して、連携する丁寧なサッカーしかないと言われています。しかし、男子代表は苦しくなるとときどきそのことを忘れて、無理な突破や、届きもしないロングボールを放り込んだりしてファンをガッカリさせたことは二度や三度ではありません。
一方、なでしこジャパンは強引な突破やロングボールを封印し、ひたすら技を磨いて世界を征しました。そして女子スポーツの面白さを人々に気付かせました。
バレーボールでも男子はパワーとスピードが強すぎてラリーの応酬にならないので女子の技術戦のほうが見て面白いというファンは多いようです。
ゴルフも男子のプロは一般のゴルフファンのお手本としてはスーパー過ぎるので、女子のほうが見ていて参考になるという声をよく聞きます。
男子に比べてパワーやスピードが無いということは女子スポーツのマイナスの一面ではありますが、それは逆に、面白さとして反映されることもあるのです。
本来は戦うことにそれほど向いていない女性たちが、それでも戦おうとして技や術や策の部分で全力をあげて対抗し競い合う。そして、それが見ていて分かりやすいのが女子格闘技の面白さです。
女子格闘技はまだまだ層が薄いこともあって、男子でときどき見るような超人的な選手や、神業のようなスーパーファイトに出会うことはありませんが、等身大の人間が、ワザやセンスを必死に磨いて等身大以上になっていくドラマならここにはたくさんあるのです。そして、それこそが単なる「格闘」じゃなくて「格闘技」の面白さだと思うのです。
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コメント
いまだに日本人は女子格闘技に対して偏見な目で見る人が多いと思いますよ。でも、女子格闘技は男子には無い輝きがありますね。今は本当に女性の時代ですよ。男性がますます肩身が狭くなりますね。
おれは男子も女子も関係なく格闘技は見るけど、サッカーはなでしこだけ見ればいいと思うようになったわ(笑)男子代表よりも度胸あるから。