かなりむかしのことですが、武術研究家の松田隆智さんの本でこのようなことを読んだのを今でも印象深く覚えています。
「世間の人は『空手は君子の武術』という言葉を誤解している。これは空手をやると君子(立派な人)になると言う意味ではない。空手はとても危険な技術だから君子だけにしか教えてはいけない、という意味なのだ。」
これは空手に限らずあらゆる武術、コンバットスポーツ、格闘技に言えることだと思います。
武術や格闘技のパンフレットを見るとかならず「心身鍛錬」「人格育成」ということばがあり、実際に道場では礼節は厳しく教えていると思います。しかし、それが必ずしも人格を磨くことにはつながらないでしょう。
これは野球でもサッカーでも同じです。いいプレイヤーが必ずしも人格者とは限らないのです。
でも、武術や格闘技では、なにしろ素手がそれだけで武器ですから、やはりそれをやる人はそれなりの人格を持ってくれないと困ります。
今回、元WBCスーパーフライ級王者の徳山昌守さんと神田桃子選手が続いて良くないことで話題となり、とても残念に思います。
「事件」の中身だけを見ると普通のひとなら大問題になるほどのものでもなく、特に悪質でもありませんが「ボクサーは人のカガミであるべき」「君子であるべき」という思いから厳しい批判を投げかけて来る人もいるでしょう。
格闘技をやる人はそれだけでもう人には手を出せません。それを分っている上で挑発して来るような悪い「一般人」もいるようです。プロはヤジを飛ばされても言い返せない。ひどい記事を書かれても反論出来ない。我慢しなければならないのが格闘アスリートのつらいところ。
でも我慢してください。それが武器を持つ人の道です。
それから、わたしたちファンは過度の幻想を持つのをやめましょう。彼ら、彼女らも普通の人間なのです。間違いもします。感情もあります。間違いは許しましょう。
わたしたちも普通の人間。ひとを裁ける神様ではないのです。
コメント
事件を起こした二人とも「パンチを出すのは
リングの上だけ」を忘れているのでしょう。
大学の同期に四段の柔道部主将がいましたが、普段は物静かで面白くて大人しかった
です。
本当に強い人はそうなんだなと感じました。
桃子に関しては、いじめに遭ったのがきっかけでボクシングを始めたのだから、こんな騒ぎは起こしてほしくなかったですね。
今回の事件の背景とか原因がどういうものなのか、ハッキリわかりませんが…。
もう、20年くらい前ですが、見に行った大会で大山倍達総裁が言われていた言葉。「昔の侍というのは滅多に刀を抜かなかった。常に鞘におさめていた。それがひとたび大義名分が立てば、一刀両断のもとに斬り捨てる。それが侍のたしなみであった。」これは今でもそうだなーと思う言葉です。