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新時代到来!女子最強の6大決戦 結果 江畑佳代子 VS パク・ジヒョン WBO世界タイトルマッチ、 天海ツナミ VS チャオズ箕輪 WBO世界王座決定戦 ほか ボクシング女子

 Boxing

2018年3月8日(木)東京 後楽園ホール
VICTORIVA.1

 会場に行けず動画配信での観戦でしたので、結果と感想だけ書いておきます。その前に・・QRと同じように現場に行けなかった皆さん、ぜひ動画配信でこの大会を確認してください。有料ですので980円かかりますし、いまいち画質がアレですが、それでもこの熱戦7試合が980円ならお安いもんです。絶対損はさせません。これ見て感動しなかったらボクシング見ないほうがいい、そんな大会です。というか、この大会だけじゃなくてボクシングレイズさんにアップされている過去の試合も全部見てもこのお値段。直近の廣本江留香 VS 鈴木なな子戦も見れますよ。画質がアレですけどね。

 というわけで、以下の結果は読まずにボクシングレイズさんに登録して動画観戦しましょう。(信じてもらえないでしょうが、ボクシングレイズさんの回し者ではありません)

victoria


WBO女子ミニフライ級世界タイトルマッチ 10回戦
○王者 江畑佳代子 えばたかよこ(ワタナベ)
判定 2-0
×挑戦者 パク・ジヒョン(現WIBAミニマム級世界王者/現WIBFミニマム級世界王者/元IFBAストロー級世界王者/韓国)
江畑佳代子選手が判定で同王座の初防衛に成功。

 世界王座の初防衛戦で最強の挑戦者を迎えた王者江畑佳代子選手。これは大注目の一戦。パク・ジヒョン選手はかつてIFBAストロー級世界タイトルを16回連続防衛した大王者で、韓国のボクシングコミッションの分裂騒ぎさえなければ、いまも同王座を20回以上防衛していたはずのすごい選手。日本のメディアでは怠慢によりまったく紹介されず「いないこと」になっていましたが、彼女こそが世界の女子アトム級の真の実力者です。

 その韓国が誇る最強王者は自分の階級では戦う相手が「本当に」いなくなってしまい、なんと2年半も試合に恵まれず、今回は階級をひとつ上げて江畑選手の王座に挑んできたのです。長期のブランクがあり、階級も本来より上で、コンディションが心配されましたが・・。

 リングインしたパク・ジヒョン選手は体は引き締まり、表情も精悍。動きも軽快。けれども、序盤から主導権を握ったのは江畑選手。パク・ジヒョン選手は慎重に構えてスタートダッシュのタイミングを見逃し、足を使って動き回る江畑選手を追う展開に。

 江畑選手は相手の動きを見切ってパンチをかわし、チャレンジャーの打ち終わりに的確なパンチを叩き込みます。ココというときには必ず手を出し、スキを見逃さない素晴らしいボクシング。

 ペースを握られたパク・ジヒョン選手は後半から積極的に前に出て強烈なパンチを振るい、ヒヤッとさせる場面を作って実力を見せますが、形勢を覆すまでには至らず、試合は判定へ。

 ジャッジ1者がドロー、2者が王者を支持して、江畑選手の初防衛が成功。強すぎると思われた挑戦者を見事に封じこんでの価値ある勝利でした。非常に高度な試合で、まさに価値ある防衛戦。腰のベルトが本当に輝いて見えました。

WBO女子ライトフライ級世界王座決定戦 10回戦
×チャオズ箕輪 ちゃおずみのわ(現OPBF東洋太平洋フライ級王者/ワタナベ)
TKO 8回終了時棄権
天海ツナミ てんかいつなみ(現OPBF東洋太平洋ライトフライ級王者/元WBAスーパーフライ級世界王者/アルファ)
天海ツナミ選手がTKOで勝利してWBO女子ライトフライ級世界王座を獲得。これでツナミ選手はWBAスーパーフライ級に続いて世界2階級を制覇。

 もうひとつの必見の世界戦がこちら。元アマチュアボクシング日本王者で現OPBFフライ級王者のチャオズ箕輪選手と、元WBAスーパーフライ級世界王者の天海ツナミ選手の激突です。

 先手を取ったのは箕輪選手。ここ数戦のジャブもフットワークも省略した雑な試合が嘘のような素晴らしい動き。高速ジャブから上下に打ち分けるボクシングはさすが全日本王者。歴戦の天海ツナミ選手もあやういかと思われましたが・・

 第3ラウンドまでに箕輪選手の動きを読み切ったツナミ選手はその後に鋭い反撃。箕輪選手の打ち終わりに一撃、打ち気を見せた瞬間にカウンターを一撃と、派手さはないもののファンをうならせるツナミ選手の絶妙な拳さばき。優勢、劣勢がすこしずつバランスを変えるこの第3~第5ラウンドはファンをシビれさせるような最高の見せ場でした。日本人同士でこんな面白い試合になるんですね!

 第5ラウンド以降は箕輪選手の空転をツナミ選手が狙い撃ちする展開。アマボクシングは3~4ラウンドぐらいしかありませんから、それ以上になるとプロの経験の違いが大きく出てくると思います。このへんがプロ5戦全勝とは言っても、総ラウンド数はまだ18しかない箕輪選手と240ラウンド以上やっているツナミ選手の埋められない差ですね。

 アマ出身の選手にノンタイトルの8回戦や10回戦をやらせることなく、世界戦をやらせるプロボクシング界は間違っています。そんな簡単な世界じゃないんで。

 試合は8回終了間際に一方的に打たれはじめた箕輪選手を見たセコンド陣が棄権を選択、天海ツナミ選手がTKOで勝利してWBO女子ライトフライ級王者となりました。

 両者が実力を発揮した見ごたえのある試合でした!

 しかし、ツナミ選手は優勢なラウンドの終盤もさらっと流したりして、ちょっと余裕を見せすぎなのが気になりました。一発当てた後は畳み掛けたり、最後の10秒は猛ラッシュするのがこの世界のお約束なんですから、そのへんもっと貪欲にならないと。ジャッジがどうしても1点差つけたくなるアピールポイントはラウンドごとにちゃんと作りましょうよ。今回だって結果はTKOで最高の戴冠となりましたが、スコアはどうだったかアブナイと思いますよ。

OPBF東洋太平洋ミニフライ級タイトルマッチ 8回戦
○王者 花形冴美 はながたさえみ(花形)
判定 3-0
×挑戦者 塙英理加 はなわえりか(UNITED/OPBF同級シルバー王者)
花形冴美選手が判定勝利で同王座の初防衛に成功。

 惜しいところで手が届かなかった世界戦を繰り返している花形選手の、自身の持つOPBF王座の初めての防衛戦。挑戦者は同級のシルバー王者である塙選手。これは正規王者とシルバー王者の統一戦ということになるのでしょうか。両選手ともにベルト保持者ではありますが、花形選手のプロ経験が140ラウンドで、塙選手が40ラウンドですから、この差を塙選手がどうやって越えていくのか、という一戦。

 両選手は似たようなタイプのボクシングをするのですが、より小柄な塙選手が1階級小さく見えました。そして、押し合い、打ち合いなどのボディコンタクトのあとでいつも体勢が崩れるのは塙選手の方なので、パワーの面でまだこの階級の王座にはちょっと足りないのでしょう。

 まったく攻撃の手を休めない塙選手からこの試合にかける気持ちは伝わってきて、ナイストライではありましたが、花形冴美選手が満場一致で判定勝利をものにしました。

日本女子バンタム級タイトルマッチ 6回戦
○王者 吉田実代 よしだみよ(EBISU K`s BOX)
判定 3-0
×挑戦者 カイ・ジョンソン かいじょんそん(竹原&畑山)
吉田実代選手が判定勝利で同王座の初防衛に成功。

 相手に応じてそのファイトスタイルを変える吉田実代選手と、試合ごとに内容に波があるカイ・ジョンソン選手がタイトルマッチで対戦。

 最近はびっくりするような突撃ファイトを披露している吉田選手ですが、この試合ではおちついてキッチリかまえての正統的なボクシングを見せます。

 それに合わせてかどうなのか、対高野人母美戦のような喧嘩ファイトでは活きの良さを見せるカイ・ジョンソン選手も、この試合はじっくりかまえた戦い方。

 ど突き合いに持ち込むとスイッチが入るカイ選手を意識して吉田選手がこのような戦い方を選んだ・・のかどうかは分かりませんが、とにかく試合は吉田選手のペースに。

 カイ選手がもったいないのは、生まれ持った身長とリーチのアドバンテージがあるのに、ストレート系が少なく、こういう試合でそれを生かせないことです。せっかく上背があるのにフック系を多用する接近戦が好きなんですよね、カイ選手。だったらもっとショートレンジに徹したほうがいいのかもしれませんが・・。どっちつかずな感じで彼女の狙いが見えてきません。

 というわけで、接近戦で小回りのきく吉田選手がうまく打ち分けて大差の判定勝利となりました。初防衛成功でそろそろ吉田選手はこの王座の「次」を考えるフェイズに踏み出すことになるのでしょう。

日本女子フライ級王座決定 6回戦
×小関有希 こせきゆうき(K&W)
判定 0-3
池本夢実 いけもとゆめみ(琉球)
判定で池本夢実選手が勝利し、日本女子フライ級王者となりました。

 強打者同士のこの試合は、ハードなパンチが飛び交う激戦となりました。初回からバチバチの打ち合いでしたが、2回開始早々に池本選手の右フックで小関選手がダウン。リスタート後はダメージを感じさせない動きで巻き返しを図る小関選手。

 手数多めで必死に追い上げる小関選手ですが、6回戦でのワンダウンを埋めることは難しく、判定は3-0で池本選手の勝利。迫力ある試合でした。

日本女子アトム級王座決定 6回戦
×葉月さな はづきさな(YuKO)
判定 0-2
鈴木菜々江 すずきななえ(シュウ)
鈴木菜々江選手が判定勝利で日本女子アトム級王者になりました。

 こちらは昨年12月に1-1のドローで王座が決まらなかった同カードの決着戦。初回は鈴木菜々江選手が積極的に手を出しますが、左右ともにスピードがありません。そこを葉月選手がフックとアッパーで狙い撃ちして優勢。

 しかし、第2ラウンドぐらいからだんだんスピードアップした鈴木選手は、第3ラウンドになるとブチ切れたように左右のパンチをふるいながら徹底的な前進ファイト。そのフォームは乱れがちで一見むちゃくちゃなようでも、ちゃんと上下にパンチを散らして、時にはクリーンヒットもあるのがいいところ。そんな鈴木選手の勢いに、巻き込まれないようにキッチリとしたボクシングで対抗する葉月選手。

 どちらが明確に勝ったとは言えない全6ラウンドが終わって、判定は僅差0-2で鈴木菜々江選手の勝利。しかし、葉月選手も非常によかったです。

47㎏契約 6回戦
青木沙耶香 あおきさやか(EBISU K`s BOX)
TKO 第6ラウンド
×下岡由美子 しもおかゆみこ(厚木ワタナベ)
青木沙耶香選手のTKO勝利

 両選手とも軽量級らしいスピード感にあふれたキビキビした小気味いいボクシング。第1ラウンドは互角な展開と思われましたが、ラウンド終了間際に青木選手の右ストレートで下岡選手ダウン。

 その後はダメージを感じさせずに下岡選手も猛然と追い上げて接戦。下岡選手のパンチがときおり青木選手の顎を跳ね上げます。しかし、第4ラウンドぐらいから、青木選手がパンと一発当ててからストレートの連打を叩き込む印象的な場面が繰り返され、第6ラウンドのストレートラッシュを下岡選手が浴びたところで、レフリーが試合をストップ。

 青木選手、いい勝ち方でした。

 全試合見て「日本の女子のボクシングもついにここまで来た!」と感じました。この大会はここまでで最高の到達点です。基本的な技術がしっかりしているのはもちろん、見ごたえもちゃんと与えられるプロスポーツになったと思います。

 メインの二つの世界戦はいずれも地球上のどこに持っていってもきっと喜ばれる名勝負です。QRはこの先なんどでもこの試合を見返すことでしょう。

 そして、世界タイトル戦ではなくとも、ほかの試合も見所はたくさんあり、ダウンシーンもあり、それぞれの選手に個性もあり、まぎれもなくこれは「プロボクシング」の興行でした。

 「女の子が試合やってますよ」的なジョシカク的価値観はもうどこにも無いのでした。噛ませも無ければ、インチキも無いのでした。

 素晴らしい!もう暗い時代は終わりました。選手、関係者の皆様、こんなに熱い大会をありがとうございます。今後にさらに期待します。がんばって下さい!

江畑佳代子 えばたかよこ(ワタナベ)19戦12勝(うちタイ人6)7敗2分6KO(うちタイ人3)
パク・ジヒョン(韓国)25戦22勝3敗6KO
チャオズ箕輪 ちゃおずみのわ(ワタナベ)6戦5勝(うちタイ人3)1敗4KO(うちタイ人3)
天海ツナミ(アルファ)37戦25勝(うちタイ人3)12敗14KO(うちタイ人3)
花形冴美 はながたさえみ(花形)25戦14勝(うちタイ人1)7敗4分7KO(うちタイ人1)
塙英理加 はなわえりか(UNITED)10戦8勝2敗(うちタイ人3)3KO(うちタイ人2)
小関有希 こせきゆうき(K&W)10戦5勝(うちタイ人0)5敗1KO(うちタイ人0)
池本夢実 いけもとゆめみ(琉球)6戦5勝(うちタイ人1)1敗
葉月さな はづきさな(YuKO)10戦6勝(うちタイ人1)3敗1分2KO(うちタイ人1)
鈴木菜々江 すずきななえ(シュウ)9戦6勝(うちタイ人0)2敗1分1KO(うちタイ人0)
青木紗耶香 あおきさやか(EBISU K’s BOX)9戦4勝(うちタイ人0)3敗2分3KO(うちタイ人0)
下岡由美子 しもおかゆみこ(厚木ワタナベ)9戦4勝(うちタイ人0)5敗1KO(うちタイ人0)

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