Boxing
2012年11月12日(月) 東京 後楽園ホール
ザ・カンムリワシ・ファイトvol.43 Wタイトルマッチ
OPBFスーパーフライ級王座決定戦 8回戦
つのだのりこ(白井具志堅)赤コーナー
VS
稲元真理(熊谷コサカ)青コーナー
山口直子選手が世界王座に就いたために空位となった東洋太平洋OPBFスーパーフライ級の王座。新王者の決定戦が同級2位のつのだのりこ選手と同5位の稲元真理選手の間でおこなわれました。
しかし2位と5位の対決といってもこの階級には6位までの選手しかいませんし、稲元選手は負け越し中で、直近の試合も黒星。そのファイト内容もお世辞にも良いとは言えず、当然、このカードへの期待度は低いものでした。ところが…
第1ラウンド つのだ選手の突進を右に左へと軽快な動きでかわず稲元選手。つのだ選手は気負いのためか動きが固く、スリップでリングに倒れる場面も。
つのだ選手が前進しながら放つパンチは稲元選手に届いてはいるのですが、稲元選手が常に動いているために芯には効かずダメージとなりません。
第2ラウンド 完全に固さが取れたつのだ選手がどんどん前進。左ボディ、右ストレートで攻勢をかけますが、稲元選手は常に動きをキープしながら左ジャブ、右アッパーを出し続けます。パワーではつのだ選手が上回るものの、手数では稲元選手も負けていません。稲元選手、健闘しています。
第3ラウンド 動き続ける稲元選手。しかし、つのだ選手のパンチが正確さを増し、左右のフック、アッパーの直撃をもらってしまいます。打たれながらも動きは落ちないのが印象的ですが、ポイントはつのだ選手でしょう。
第4ラウンド 稲元選手が右ストレート、左アッパーなどをヒット。中間距離では稲元選手のほうが打ち勝っています。
中盤はクリンチで双方動きの少ない状態でしたが、終盤は額をくっつけるほどの至近距離でのドツキ合い。このラウンドは双方ゆずらず互角。
インターバルにここまでのスコアが公開されます。39-37、40-36、40-36で三者ともにつのだのりこ選手を支持。
第5ラウンド ここまでのようなボクシングではポイントにならないことを悟った稲元選手はストレート系を放ちながら前進。これをフックで迎え撃つつのだ選手。ショートレンジの連打が存在感を見せ、つのだ選手が稲元選手を押し返します。
第6ラウンド オーソドックスにワンツーを打ちながら出てくる稲元選手に密着状態からのフック、アッパーで応えるつのだ選手。ショートレンジでは手が出ない稲元選手。つのだ選手のパンチが一方的に打ち込まれます。
第7ラウンド 序盤、中間距離での打撃をいい感じで繰り出す稲元選手。
つのだ選手は上体を振って被弾を避けつつ前進すると近距離での激しいフックとアッパーの連射。その弾幕の前に稲元選手の両拳は沈黙。
第8ラウンド あいかわらずつのだ選手の圧力は強力。体で押し返すようにしながら稲元選手が意地の反撃に出て拮抗したドツキ合いになりますが…
右ストレートからフックでたたみかけたつのだ選手が優勢の展開で試合終了。
判定は大差でつのだのりこ選手の勝利。しかしながら、稲元選手の頑張りでプロのリングにふさわしい熱戦となったことはこの試合の大きなポイントです。
稲元真理選手はフットワークと打撃の連携や、右と左のバランスがかつてないくらいに機能し、勝利への情熱も感じられるナイスファイトを見せてくれました。彼女のこれまでのベストバウトだと思います。
新王者つのだ選手の猛烈な勢いで押し切るノンストップファイトは圧巻。
振り返れば、当ブログの開始当初は、若さや話題性に偏重した軽薄な『ジョシカク』の名残がまだ格闘技界に色濃くただよっていた時期で、つのだ選手などのベテラン勢にはメディアのスポットは当たらず、試合機会も与えられない厳しい状況がありました。
そんな中で一時は国内のリングへの道は完全に閉ざされ、キック、ムエタイ、ボクシングと戦場を求めて海外を転戦したファイターが、ついにひとつの成果を手に入れたのが今回の試合です。
人はこの試合だけを見て何かを語るかもしれませんが、ここにいたるまでにすでに色々な状況との戦いをつのだ選手は勝ち抜いてきたことを忘れてはいけません。この試合はそういう試合でした。
OPBFスーパーフライ級王座決定戦 8回戦
○つのだのりこ(白井具志堅)
判定3-0
×稲元真理(熊谷コサカ)
つのだのりこ選手の判定勝利。
79-73、79-73、80-72
この試合の結果、両選手の戦績は以下のようになります。
つのだのりこ(白井具志堅)8戦6勝2敗3KO[トライアルマッチ1勝]
稲元真理(熊谷コサカ) 10戦4勝6敗
(戦績はJBC公認以前からの通算)
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