Boxing
2013年3月3日(日)東京 後楽園ホール
G-Legend 5
WBAミニマム級タイトルマッチ 10回戦
王者 多田悦子(フュチュール)
VS
挑戦者 黒木優子(YuKO)
赤コーナーはWBAミニマム級チャンピオン多田悦子選手。以前は世界タイトル保持者としては線の細い印象がありましたが、ここ数戦はぐんとパワーアップして説得力ある試合を見せ、安定感のある堂々たる王者の威光を漂わせています。今回が同王座の9回めの防衛戦。
チャレンジャーはWBA同級世界12位の黒木優子選手。WBCユースのベルトを巻いたこともある日本ボクシング界期待の新星ですが、世界王座への挑戦はこれが初めて。
第1ラウンド ともにストレートを得意とするサウスポー同士の対決。
多田選手がジャブからストレートでまずは小手調べ。軽い当たりながらもスピードと気迫は充分。
黒木選手もジャブを放ちますが、いま一歩踏み込めない感じで、グラブが軽くさわるのが精一杯。多田選手の攻撃を受けるとバックステップ。
第2ラウンド この回の黒木選手はなるべく下がらずにジャブを多く打とうとしているようです。そのジャブも前の試合で見た時よりはかなりフォームや軌道が改善されて上達の過程にあることがわかります。
しかし、王者多田選手とのジャブの指し合いでは速さと強さで圧倒的に不利。多田選手の右拳のヒットを何度も許してしまう状況となってしまいました。
第3ラウンド 突然、黒木選手は意を決したように前進、左右を連発して王者を打ちます。ここからいい流れをたぐり寄せたい挑戦者。
けれども後半になると多田選手が厳しいワンツーで押し返し、黒木選手は前に出られなくなっていきます。
打たれても暗い顔を見せないのがこの人のいいところ。しかし、王者もそろそろ本気で打ってくる頃でしょう…。
第5ラウンド 試合はいよいよ中盤。多田選手の強いプレッシャーを受けながらも、黒木選手は相手の打ち終わりに強気で攻勢をかけてヒットを奪います。
その勢いでさらに右、左。多田選手はクリンチでこれをしのぎます。この回は明らかに黒木選手が優勢。
第6ラウンド 開始15秒、黒木選手の左ストレートをかわした多田選手は鋭い右で逆襲。そのままペースを掴んだ王者は堂々とリングを支配します。
後半、黒木選手も打ちにいきますが、命中率で多田選手が上。黒木選手はいい形でのヒットがなかなか生まれません。
第7ラウンド 開始直後から王者のワンツーが黒木選手を襲います。
第8ラウンド ゴングとともに両者が走りよってラウンド開始。黒木選手が今までよりも強いジャブを放ちながら踏み込んでインファイトを仕掛けます。
これを多田選手が右フック、ストレートで迎え撃つと、黒木選手は接近戦を継続出来ずに後退。この回も多田選手が押さえます。
第9ラウンド ベルトライン付近に右手を下げ、そこからノーモーションで斜めに突き上げるパンチで次々とヒットを重ねる多田選手。
アリシャッフル風の妙なステップで観客を沸かせながら細かい連打と鋭いジャブでリードを広げます。
第10ラウンド パワーパンチを狙う多田選手と警戒する黒木選手。
打ちかかる王者に細かいパンチを放つ黒木選手ですが、それは敵を倒すためというよりは明らかに防御用のパンチとなっています。
10ラウンド終了とともにコーナーポストに駆け上がって優位をアピールする多田選手。実に王者らしい姿ですが…
判定勝利を告げられた瞬間から号泣。涙が止まりません。と思ったら…
カメラマンの前ではいつものおちゃらけ(笑)。実に忙しいチャンピオンでした。
WBAミニマム級タイトルマッチ 10回戦
○王者 多田悦子(フュチュール)
判定 3-0
×挑戦者 黒木優子(YuKO)
ユナニマスデシジョンで多田悦子選手が勝利しWBAミニマム級王座の9回めの防衛に成功。
(99-91、98-92、98-92)
前評判の高い挑戦者を王者多田悦子選手が真正面から受けて弾き返したタイトルマッチとなりました。「王者強し、挑戦者まだまだ」の見本のようですが、黒木選手には右が弱いという致命的な課題があるのは前からわかっていたので別に驚くほどの結果ではありません。
むしろ、打たれても平然どころか、笑顔まで見せながら前に出て行く姿に、この人は本当にプロボクシング向きだなという印象を強く持ちましたし、磨けば光る素材だという評価はまったく変わりません。ディフェンス意識も高く、つねに頭を動かしているのもいいですね。
多田選手だって最初から強かったわけではなく、ベルトを取った後も大きな努力を重ねてここまで来ている選手なのです。そのあたり、色々思うところの多いタイトルマッチでした。両選手の今後に期待します。
この結果、両選手の戦績は以下のようになります。
多田悦子 ただえつこ(フュチュール)14戦12勝2分2KO
黒木優子 くろきゆうこ(YuKO)12戦9勝3敗5KO
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