観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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若い選手に「最大限の評価!!」はおくらない 又は「今世紀最大のバンド」はどこに行ってしまったのか?

 むかしの音楽の話題になると必ず出て来るお決まりのネタに「今世紀最大のバンド」というのがあります。
「○○ってバンド覚えてる?」
「あー、今世紀最大のバンドね(笑)」というあれです。

 音楽業界にはビートルズやストーンズなどあまりにも有名なバンドがありますが、音楽ファンはそんな昔話を読まされたり聞かされたりするよりは、いま、この目、この耳で確かめられる現在進行形の素晴らしいバンドをいつだって求めるもの。

 そんなファン心理につけ込んで「ついに登場!今世紀最大のバンド!」というコピーで新人を売り出すのが音楽業界の毎度おなじみの手口。確かにこのコピーはファンの気持ちを掴みます。だって、今世紀最大ということは昔のアノバンドもコノバンドも小さく見えちゃうすごいヤツってことですからね。

 でも、そんなに過大評価されちゃうと、思ったような感じじゃなかった場合は「なーんだ」とガッカリされて、早々と人気がフェードアウトの運命となるわけです。

 というわけで、「今世紀最大のバンド」と売り出されたひとたちほど、今は「○○って覚えてる?」って言われるのがお決まりのコース。音楽業界の悲しいジョークです。

神村エリカ選手

 さて、格闘技界でRENA選手が苦労に苦労を重ねながら名前を知られるようになったその直後に、今度は神村エリカ選手を売り出そうという動きがありました。

 この時に使われた手法がまさに「ついに登場!今世紀最大のバンド!」とそっくりのパターン。これはヤバイと思いました。

 神村選手はQRはもちろん、キック好きなら誰もが期待する有力選手。目に力があってエネルギッシュ、彼女が放つ殺気はただならぬものを感じさせ、勝機を掴んでからの決定力は唯一無比。どこまで伸びるかわからない逸材。

 しかしまだまだ「最強」の看板を担がせるには彼女はいかにも若く、もう少し大切に見守りたいなと思っていたそんな時に女子キック史上いまだかつてない大物選手みたいな手放しのヨイショが始まったのです。

 むかしの記事を見ていただくとわかりますが、当ブログはRENA選手であろうが誰であろうが初期のころから手放しで誉めたことは一度もありません。

 なぜなら、若い選手を持ち上げすぎるのは、ほめ殺しみたいなものだからです。いい選手には「いい」「将来が楽しみ」とは書きますが、「最強!」だの「最高!」だの「こんな選手はいままでいなかった!」などと誉めちぎることは絶対にしません。

 若い選手は必ず負けます。それを乗り越えて本物になるのです。どんな大物選手だって、その道を歩いています。最初から最強の選手なんかいません。若いうちの敗北は次への経験値です。

 それを、まだ充分な成長段階を経ていない若いうちから最大限の評価を与えてしまうと、その選手は障害に出会った時に「最高最強のはずのわたしがどうして勝てない?」という混乱におちいってしまい、それを経験値として消化出来なくなるのです。あるいはプレッシャーに潰れてしまうのです。

Erika Kamimura
 キックボクシング女子で90年代のベストは熊谷直子選手、00年代ベストは早千予選手というのはファン、関係者、選手の間で定説になっていますが、実は彼女たちに並べるかもしれなかった選手が90年代に少なくとももう一人はいました

 しかし彼女のことはいまはどんなに検索してもほとんど情報が出てきません。彼女は熊谷選手よりも年下で、フィジカルにも恵まれ、リング映えする明るいキャラクターを持ち、練習熱心で、才能もありました。

 当時のメディアは熊谷選手以上の成功を彼女に期待し、とにかく持ち上げました。スーパースターになって当然という空気さえありました。そして、ついには、まだ新人の域を出ていない彼女をモデルにしたアニメまで作られるという過熱状態が生まれました。

 その一方で、当人はまだ若い地方在住の女の子。全国からの大きな注目、周囲の期待に耐え切れずに気持ちが不安定になっていきます。そして体調と体重の管理がむずかしくなり、試合に穴をあけてしまい、最後は選手生命を失う事件が起こって彼女の名前は表舞台には出てこなくなりました。

 古くからのファンは自分の期待が彼女を傷つけてしまったのではないかという反省を感じています。ですから、わたしたちは若い選手を手放しで誉めちぎるようなことはしません。

 さて、久しぶりの試合を控えている神村エリカ選手。中学生のころから注目を集め、プロデビュー後は破竹の勢いだった彼女も、痛い敗北を経験し、ここしばらくは試合間隔も空いて、かつての過熱報道も沈静化しているようです。

 今度の大会には日本のトップ級選手が5人も勢揃いするため、彼女がひとりで女子の看板を背負っている感じだった過去のイベントよりはプレッシャーも低いでしょう。

 しかし、苦杯を喫して一段とタフになった彼女だから安心して言います。期待してます!

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コメント

  1. 行くぜ!格闘少女! より:

    昔のレーナ選手の記事を読んで、編集方針の一貫性に感服しました。創刊当時のリング誌もかくなるやと思いました。そのうち、QR認定ランキング、ベルトができたりして。
    最近でもまだプロになって数戦しかしてないのに、超新星とか言われてる選手がいます。私はこの選手には期待してるだけに、じっくり力をつけてほしいと思っているので、過度に持ち上げられるのはむしろ本人のためにならないだろうと思っています。
    これからも厳しくも温かい視点でのレポートをお願いします。

  2. miklikov より:

    三井綾選手ですよね?母校の屋上から転落して再起不能になった人。

    ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm8812999

  3. queens of the ring より:

    >行くぜ!格闘少女!さん
    いやいや、べつに大したことは書いてませんよ… 。ファンがみんな思ってることをQRはブログを持ってるから書いているだけです。
    やっぱりファンなら自分の好きな選手をあんまりヨイショされると不安になりますよね。プロのライターの人とファンとでは決定的に感性に違いがあると思います。

  4. queens of the ring より:

    >miklikovさん
    そうです。三井選手です。
    数年前あるイベントでお見かけしてとても元気だったので安心しました。いまでも格闘技は大好きらしいですね。

  5. アニオタ より:

    >まだ新人の域を出ていない彼女をモデルにしたアニメまで作られるという過熱状態が生まれました。

    ※↓『綾音ちゃんハイキック!』ですね。
    ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B6%BE%E9%9F%B3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%83%E3%82%AF!

    失礼ですがキックはK-1以外ほとんど知らない人間なので、まさかモデルの人物がプロボクシングでいえばC級・B級クラスの新人学生レベルの選手とは全然知らず、驚きました。(当時は若手女性声優バブルで勢いでだけで通った企画かと思っていたのですが、当人にとっては悲劇的なものになっていたとは…。)
    ただ、現在当人が元気で生活しているという上記の書き込みは、救いになりますね。
    管理人さんのよく推敲された記事と、レスポンスで情報をくださった方に感謝ですm(_ _)m。

  6. queens of the ring より:

    >アニオタさん
    コメントありがとうございます。
    誤解を招くことを書いてしまったので少々補足しますね。
    新人の域を出ていないというのは当時のキック界での序列での話で、実力的には三井選手はスーパー新人でした。高校生でデビューして、まだ10代のうちに世界タイトルを取っています。
    『綾音ちゃん』はその1~2年後、三井選手が20才から21才ぐらいのときに作られたと思います。
    しかし、そのころ三井選手は試合に精彩を欠くようになり、アニメが作られたちょうどその時期には悪いことに色んな事情がかさなったようで1年間ぐらい試合がありませんでした。
    98年にカムバックしてキックで2戦2勝、99年にボクシングで1引き分け。そのあと「全治2年」という事故にあってリタイアとなっています。

  7. H・F より:

    女カクではないが、ボクシングの某3兄弟が良い例ですよね。最初はメディアがホイホイしてスポーツ紙はデカデカと扱われ、テレビ視聴率もうなぎ登り、にわかファンを掴んで人気が凄かったが、化けの皮が剥がれ落ちたの様にショボい試合内容でメディアも辛口になりスポーツ紙の扱いも小さくなり、テレビ視聴率も急降下ですからね。今、井上選手と村田選手が注目度が高くなってますが、メディアのネタにならなければ良いが。

  8. おーるどふぁん より:

    鬼塚勝也の例もあります。中学生ぐらいからボクシング少年としてテレビに出て人気は出たけど、妙な判定で世界王者。防衛戦も妙な判定。いまは妙な試合の妙な解説者。

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