Boxing
『暫定王者』というシステムについては、当ブログでは何回か解説してきました。暫定王者が乱立ぎみでボクシングの権威を傷つけていることも指摘してきました。
参考リンク 暫定王者とは
先月、JBCさんがWBAさんに対して「暫定王者を作りすぎ」と抗議したことが話題になったためか、最近は『暫定王者』に興味を持つ人が多いようです。
実際に、WBAさんは「暫定王者を作りすぎ」ているのでしょうか?各団体の女子暫定王者の数を比較してみましょう。
WBA 3人
WBC 5人
IFBA 0人
WIBA 1人
WIBF 0人
GBU 1人
以上のように暫定王者が突出して多いのはWBC、WBAの二団体です。
日本で公認されている団体は、男女ともにWBC、WBAのふたつだけなので、この二団体が世界最高の権威と思われていますが、男子では、この二団体が暫定王者を含む、いろんな世界王者を作り過ぎて、すでに海外では人気と権威の面で、他団体に追いつかれ、追い越されようとしています。世界視点で見れば、この二団体が世界最高権威だった時代は遠い過去のことです。
女子の場合、IFBA(1997年)、WIBA(2000年)などの先発団体がすでに実積と権威を持ったあとに、後発のWBC(2005年)、WBA(2004年)が女子部をスタートさせたので、もともとWBC、WBAに特別な権威はありません。
実際、アメリカで一番人気のホリー・ホルム選手は、一時はWBC、WBA、IFBA、WIBAの4本のベルトを持っていましたが、その後、WBC、WBAのふたつを防衛せずに手放して、現在はIFBAとWIBAだけにしぼっていますし、イナ・メンツァー、スージー・ケンティキアン、アリシア・グラフのドイツ三人娘が一番大切にしているのは、かつてレギーナ・ハルミッヒ選手が持っていたのと同じWIBFのベルトです。
また、IFBA、WIBA、WIBF、GBUの各団体は、王者として最適の選手がいない階級は王座を「空位」としていますが、WBC、WBAの両団体は、なるべく空位を作らず、多くの階級でとにかく王者を認定しています。この傾向が一番強いのはWBCです。
先発の各団体に追いつくために、たくさんの王者をかかえて存在を示したいのかもしれませんが、王者量産は安っぽく見えるので、かえって逆効果でしょう。
さらに、明確な理由もなく暫定王者が次々誕生する現状は、ますますWBC、WBAの権威を下げるのではないでしょうか。
しかし、個々の世界王者の本当の価値は、どこの団体の王者かというとではなくて、どんな試合をする選手かということです。現在、日本にはWBC、WBA、合わせて4人の世界王者がいます。
他団体の王者に負けないような素晴らしい試合で、ボクシングの権威を守ってもらいたいと思います。
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