Boxing
2014年9月20日(土)大阪府 アゼリア大正
TO THE FUTURE Vol.18
WBOミニフライ級王座決定戦
池原シーサー久美子 いけはらしーさーくみこ(フュチュール)
VS
グレッチェン・アバニエル(フィリピン)
この日のアゼリア大正はWBOの2大タイトルマッチ。その片方は『王座決定戦』つまりチャンピオンのいないタイトルマッチで、もう片方はチャンピオンの『王座防衛戦』。ボクシングファンの常識では防衛戦のほうが格上ですが、メインをとったのはこの決定戦のほう。会場では「どうして?」という声もありましたが、それだけ池原シーサー久美子選手への期待が大きいということでしょう。
池原選手が迎えた対戦者はこれまでで最強の相手、グレッチェン・アバニエル選手。日本の誇る実力派王者の宮尾綾香選手との対戦では瞬間速度で上回ったという見方もあるフィリピンのスピードスターです。
アバニエル選手は本来は最軽量級ですから、池原選手が体格的には有利。けれども、アマでもプロでもキャリア的にはアバニエル選手のほうが数段上なので強敵には間違いありません。
第1ラウンド シーサー選手はワンツーで攻め、アバニエル選手はそれにフックを合わせてきます。
手数少なめのアバニエル選手が時おり見せる左右のフック。シュッと風を切るパンチに会場の「お~~」というざわめき。「アレ、いややな」「危険なパンチや」観客席に不安が漂います。
第2ラウンド 開始すぐから出て行く池原選手ですが、アバニエル選手は鋭いカウンターで牽制。このラウンドも全体としてはまだ静かなアバニエル選手。ガードを固めてしっかり見ている感じ。
しかし、時おり猛然とダッシュして打ち込んで来るので気が抜けません。
第3ラウンド 開始早々いきなりの左を強振するアバニエル選手でしたが、池原選手は相手の固いガードの上から左右の猛打で反撃。前にかまえた左足をタン!と踏み込みながら打ち出される池原シーサー久美子選手のジャブがなかなか強力。この圧力に下がりはじめたアバニエル選手を池原選手が追います。
ニュートラルコーナーに詰めて池原選手が攻勢。
池原選手大チャンスですが、アバニエル選手はよく見ると巧みにパンチをはずしているし、わずかのスキに反撃してきます。
しかし、最後まで攻勢を維持したのは池原選手。試合が大きく動き始めました。
しかし、アバニエル選手はフットワークを使って左右にすり抜けて危険を回避。
第5、第6ラウンド 試合は池原選手が押し気味で進んでいます。アバニエル選手はこのへんで反撃に出たいでしょう。
池原選手の前進に合わせて左右のフックとボディー打ちを見せるアバニエル選手。
第7ラウンド 相手のリズムが読めてきたのか拮抗した状況が続きます。
第8ラウンド この回は池原選手が決然と攻勢。いきなりの右から連打で押し込み、ロープを背負わせたところをストレートでのけぞらせます。
しかしアバニエル選手は大崩れせず、一瞬のスキを狙ってはショートアッパーなどで反撃。次第にディフェンスが甘くなってきた池原選手が終盤に何発か被弾。
第9ラウンド 試合を決定付けたい池原選手は、ガードの上から力強いパンチを叩き付けて主導権を掌握。
けれども、ラウンド後半はアバニエル選手も反撃。激しい終盤戦。
第10ラウンド ついに迎えた最終ラウンド。グローブタッチで戦闘開始。
アバニエル選手が打ち、それをかわした池原選手が打ち返す。両者まったくゆずりません。最後は打ち合いながら押し合う形でゴング。
ボクシングの判定の最大のポイントは『有効打』。しかし、よりパワフルな池原選手のパンチを有効と取るか、より正確だったアバニエル選手のパンチを有効と取るかはジャッジの主観によります。さて、どちらが有効打で上回ったのでしょうか?
結果は、アバニエル選手支持が1名、池原選手支持が2名、スプリットデシジョンで池原シーサー久美子選手が勝利。
判定直後から涙が止まらない。むずかしい試合を最後まで集中を切らさず栄冠を手にしました。おめでとう、池原選手!
会場をあとにするお客さんは口々に「いやー、感動させてくれるわ!」「相手が強くて面白かったな!」と絶賛。
関係者のみなさん、ボクシング人気を望むなら、強い相手を呼んでください。無名の噛ませでお茶を濁さず、強い相手とのカードを組むのなら選手は必ず期待に答えてくれます。いい試合をしてくれます。勇気をもって選手に賭けましょう。
WBOミニフライ級王座決定戦
○池原シーサー久美子 いけはらしーさーくみこ(フュチュール)
判定2-1
×グレッチェン・アバニエル(フィリピン)
池原シーサー久美子選手の判定勝利。WBOミニフライ級王座を獲得。
池原シーサー久美子 いけはらしーさーくみこ(フュチュール)8戦6勝1敗1分3KO
グレッチェン・アバニエル(フィリピン)21戦15勝6敗6KO
コメント
レポートありがとうございます。池原選手も素晴らしかったですが、アバニエル選手は強かったですね。あの強打が当たればひとつ間違えばKO負けの危険もあって、最後までスリリングな展開で観衆も緊張感がありました。
池山選手と秋田屋選手の試合レポートも楽しみです。