Boxing
ことし7月に富樫直美選手がWBCライトフライ級暫定王者になってから、急に身近になった感じの「暫定王者」という肩書きですが、これはいったいなんでしょう?
本来は、ボクシングの各階級にはつねに王者(正王者)がいて、定期的に挑戦者とタイトルマッチを行ない、ボクシング界に話題と活気を生み出すわけですが、何かの都合で王者が試合を出来ない場合(怪我や体調不良など、引退するほどでもない一時的なトラブルを抱えている場合)に、王者のかわりにタイトルマッチを行なう仮の王者が設定されます。これが暫定王者です。
暫定王者は仮の王者とは言っても、名前に暫定の二文字が付いている以外は、ほとんど正王者と変わらない扱いを受けます。ベルトも巻けますし、防衛戦も出来ます。
この制度によって、正王者が試合を出来ない期間でも、上を狙う選手たちは暫定王者とタイトルマッチをすることが出来るので、正王者の回復を待って時間を無駄にすることが無くなります。
これは、なるべく多くのタイトルマッチで話題を作りたいボクシング業界にとっても、王座に挑戦したい選手にとっても、タイトル戦が見たいファンにとっても、非常に都合のいいシステムだと言えるのです。
しかし、問題もあります。正王者がきちんと防衛していて暫定王者を作る必要もない時でも、暫定王者を作られ、王座が混乱することがあるのです。
業界の都合でもうひとりチャンピオンがほしい時などにこういう現象が起こります。しかし、本来ひとりのはずの王者が、同じ階級に2人もいたら、そのベルトの価値は本来の半分です。
むかし、畑山隆則さんがWBAスーパー・フェザー級王者だった頃、畑山さんにはなんの問題もないのに暫定王者が作られたことがありました。こういうことがあると正王者の価値が下がります。
ですから、人々が納得できる状況でない場合は、暫定王者は作るべきではないのです。そして、正王者が復帰したときには出来る限り早く暫定王者と対戦し、王者を一人だけの状態に戻すことが必要です。
この試合に暫定王者が勝てば、もちろん正王者になります。さらに、暫定王者となった日時にさかのぼって肩書きが正王者に修正されます。たとえば、7月に暫定王者となったひとが、10月に正王者に勝った場合は、7月からすでに正王者であったということに記録が書き換えられるのです。
しかし、負ければ暫定王者の肩書きは消えてしまい、普通の選手に戻ります。これが暫定王者というシステムです。
WBCには現在、ライトフライ級の富樫選手以外にも、スーパーバンタム級にジャッキー・ナヴァ選手(メキシコ)という暫定王者がいます。ナヴァ選手はすでに11カ月も暫定のベルトを持っています。
この階級の正王者はアレハンドラ・オリベラス選手(アルゼンチン)で、元気に試合をしているにもかかわらず、ナヴァ選手との正王者決定戦が組まれませんでした。が、どうやら、近日中にこの二人の対戦が決まりそうです。
富樫選手と正王者サムソン・ソー・シリポーン選手の試合も早く組まれるといいですね。
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