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WBAフェザー級王者チェ・ヒョンミ戦績詐称事件とその反応 ボクシング女子

 Boxing

 WBAフェザー級世界王者のチェ・ヒョンミ選手(韓国)のプロデビュー戦(とされていた試合)が架空のもので、実際の試合数はいままでの公式発表より1戦少ない5戦4勝1分であることが韓国で5月にあきらかにされました。

PABA(汎アジアボクシング協会) 架空であったことが確認されたのは2008年6月26日のPABA(汎アジアボクシング協会)ジュニア王座決定戦。これまでの記録では中国のチャン・ジュアンジュアン選手と戦ったチェ・ヒョンミ選手は3ラウンドにTKOで勝利してPABAフェザー級ジュニア王座を獲得したとされていました。

 しかし、実際にはこの試合はおこなわれておらず、チェ・ヒョンミ選手はまったくプロボクシングの経験が無い状態で2008年10月のWBAフェザー級世界王座決定戦でデビューし、その試合で世界王者となっていたものです。

 この件については、問題が問題だけに、WBAフェザー級王座剥奪の可能性も考えられましたが、事件以来一ヶ月が過ぎても続報が無く、どうやらチェ・ヒョンミ選手の王座は剥奪もされなければ返上もない模様です。

 チェ・ヒョンミ選手は北朝鮮生まれで、14才のときに家族全員で亡命して韓国人となりました。そして北朝鮮時代から練習を積んでいたボクシングで韓国でアマチュア選手として活躍、2007年9月にプロ転向。その後、最初のマネージャーがなにかトラブルをおこしたとかでなかなかプロデビュー戦を組めない状態でしたが、外国(中国)でプロデビュー戦をしたかのような工作をおこなって「実績」を作り2008年10月に世界戦をおこなっていました。

 このことについてチェ・ヒョンミ選手は「当時わたしは18才でプロボクシングのことは何も知らずボクシングビジネスの人たちの言うことに従うしかありませんでした。」「このことでベルトを剥奪されても仕方ないと思っています。」と語っています。

 チェ・ヒョンミ選手のお父さんは「(2008年6月26日の試合当時には)会場の周辺に中国当局の関係者が送り込まれているという情報があり、(北からの亡命者である)わたしたちは会場行きをあきらめたが、KBC(韓国ボクシングコミッション)の資料ではその試合をやって勝ったことになってしまった。」と説明。PABA会長のシム・ヤンソプさんは「この試合の準備はしたが現地で脱北者の取り締まりをおこなっているという情報があったのでわたしは現地に行くなと言った。この試合はおこなっていない。」と明言。

 しかし、それでは実際には無かった試合がなぜ記録に残ったのでしょうか?

 この架空の試合は、韓国ボクシングコミッション(KBC)の公式記録に細かく記載され、ネット上のボクシングアーカイブであるBoxRec.comなどでも堂々と公開されてきました。このような記録が何かの間違いや誤解で残されたとは考えにくいため、意図的な捏造であったことは確実と思われます。

wba では、この試合が事実でないことを一番良く知っているPABA会長シム・ヤンソプさんが架空の記録を放置して来たのはなぜか?韓国ではPABA会長シム・ヤンソプさんこそがこの捏造事件の黒幕であると報道されていて、韓国ボクシング界の組織ぐるみの不正であった可能性が非常に高いようです。

 シム・ヤンソプさんは韓国のボクシング界では広く顔がきく実力者で、PABAの会長であり、WBAに対する韓国側の窓口とも言われている人物で、プロ未経験のチェ・ヒョンミ選手が世界タイトル決定戦のチャンスをゲット出来たのも、大きな権力を握っている彼の助けがあったからと考えれば合点がいく話です。

 今回の事件から浮かんで来るのは、韓国ボクシング界の腐敗とWBAという組織のいい加減さです。

 この事件は一人の選手の便宜を図るために、ありもしない試合があったことにして、負けてもいない選手をTKO負けにしているとんでもない事件ですが、調べてみると負けたとされているチャン・ジュアンジュアン選手(中国)は、この事件の前にも後にも試合の記録が無く、実在の選手かが非常に怪しい感じです。また、その日の同じ大会の試合として現在も記録に残されている他の3試合の選手(中国選手1人、北朝鮮選手5人、計6人)全員がこの試合以外には記録が無く、2008年6月26日に中国でおこなわれたというこの大会がそっくりそのまま架空の存在だという可能性も強くなってきました。

 この事件は、ほんの出来心や何かの間違いで発生したものではなく(犯人がシム・ヤンソプさんかどうかは別にしても)この世界でかなりの実力を持つ何者かがきちんと準備して仕組んだものであることは間違いありません。

 つまり、ボクシングの関係者が組織ぐるみでマスコミやファンを騙していたのがこの事件です。

 このことが報道されると韓国では当然のようにこの業界の在り方そのものが根本から非難を受け、いままで何回も不祥事を起こして不人気スポーツとなっていた韓国プロボクシングは、今度こそ本当にその名誉や尊厳をすべて手放したような状態となりました。

 韓国のネットでは
「プロの戦績が無くてもなれるようなのがボクシングの世界チャンピオン?」
「韓国の女子世界チャンピオンのほとんどがプロ経験10戦以下で世界タイトルを取っているのはおかしくないか?」
「OPBFやPABAの女子タイトル戦が韓国でメインイベントに組まれたら韓国ボクシングの未来は無いと思う」
「韓国に来るタイ人女子選手はあまりにも実力に欠け、基礎の力すら無いのはどうしてか?タイ人相手に勝ってもなにか意味があるのか?」
キム・ジュヒ選手は世界4団体統一王者と言われているけど、世界的には全然騒がれていないのはどうしてか?注目されていないのではないか?」
などというような疑問・疑惑の声が書き込まれ、韓国ボクシング界はこのようなファンの声に回答しなければいけない立場に追い込まれてしまいました。

 このような逆風の中に今月突然立たされてしまった選手が三人います。7月9日にタイトル防衛戦を予定しているIFBAミニフライ級王者キム・ダンビ選手と4団体統一王者キム・ジュヒ選手、そして16日に防衛戦を予定しているIFBAストロー級チャンピオンのパク・ジヒョン選手です。

 IFBA王者のキム・ダンビ選手とパク・ジヒョン選手が迎える挑戦者はどちらも無名の中国人選手…。関係者にとっては、実に「間が悪い」状況でしょう。そこで、韓国の人たちから最も尊敬と人気を集めている過去の名選手であるキム・メッサーさんをアメリカから呼んでふたつのタイトルマッチのスーパーバイザーにすることできちんとしたタイトルマッチであることをアピールする考えのようです。

 また、キム・ダンビ選手と同じ日に防衛戦を予定している4団体統一王者キム・ジュヒ選手は、その対戦相手が、一昨年の9月に一度戦ってキム・ジュヒ選手がTKOでくだしているファプラタン・ルークサイゴンディン選手(タイ)。すでに倒した同じ選手をもう一度呼んでのリマッチということで、これも、時期が時期だけに、ファンからの冷たい視線を集めそうなカード。

 この試合では、元世界王者のテリー・モスさんをアメリカから呼んでスーパーバイザーとベルトのプレゼンターをやってもらうことが決定しているようです。みんな考えることは同じなんですね…。

 ファンからの「韓国の女子ボクシングはインチキなんじゃないか?」という声に答えるために、結局は、外国からの権威付けという安易な手段を選んでしまった韓国ボクシング界。

 なんか、信用回復に向けての努力の方向が、かなり違うような気がするんですけれど…。

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コメント

  1. queensofthering より:

    当ブログでは過去記事のチェ・ヒョンミ選手の戦績に関する部分はすでに書き直していますが、もしもまだ直ってない部分がありましたらすみやかに直しますのでお気づきの方はご指摘をお願いします。
    また、この記事のキム・ジュヒ選手の試合に関して当初間違った記述をしていましたが、ご指摘を受けて訂正しました。
    間違いをお詫びするとともにご指摘に感謝します。いつもQRに暖かい支持をありがとうございます!

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