Boxing
タイトルマッチに勝ってチャンピオンになり、ベルトを手渡される場面は、プロボクシングのもっとも華々しい場面です。
しかし、実は、団体が勝者に与えるのはベルトを腰に巻く権利だけで、ベルト自体は別売り。自分のベルトを受け取るには数十万円のお金を出して新規のベルトを買うことになります。
また、王者としての地位も団体に「認定料」を払わなければ取り消されてしまいます。ボクシングの王座認定団体は、この認定料で成り立っているのですから、当然のことです。
認定団体は慈善事業ではなく、利益のために存在しているので、出来るだけたくさん収入を得たいと思うのは自然なこと。そのためには、王者にたくさん防衛戦をしてもらい、何回も認定料を払ってほしいと考えます。ですから、防衛戦をしない王者はタイトル剥奪となります。
それではこの認定料というものはいったいどれぐらいの金額なのでしょうか?これは一律ではなく、基本的に王者の収入に対するパーセンテージで決まるようです。つまり、ファイトマネーの高い人気王者は高額な認定料を払い、不人気王者はファイトマネーが安いので認定料も安くなります。
どちらが団体にとって良い王者なのかといえば、もちろんファイトマネーの高い人気王者ですよね。高い認定料がもらえるのですから。団体にとっては人気選手 イコール 団体の利益となります。そしてこのことは露骨に団体運営に出てきます。
日本では女子ボクシングはマイナーで、人気も無く、「世界王者なのに収入はチケットの手売り分」「わたしは貧乏チャンピオン」という悲惨な状況ですが、メキシコ、アルゼンチン、ヨーロッパなどの国では女子ボクシングは人気スポーツ。テレビ中継もあり、王者はボクシング収入で生活出来るのはもちろん、人気王者のみなさんはリッチなスポーツセレブとなっています。
ボクシング団体から見れば、そのような国の人気選手こそが収入源であり、人気選手のいないアトム、ミニフライ、ライトフライなどの軽量級は、あまり重要な存在ではないのです。どこの団体でもこのあたりの階級の運営がデタラメなのはそういうわけです。
デタラメというのは、タイトルマッチなのに挑戦者が3流だったり、4流だったり、引退選手だったりすることで、そのような試合では人気は出るわけもなく、さらに運営はデタラメとなる負のスパイラルがどこまでも続くこととなります。
このような悪い状態が打開されるとしたら、それは、ボクシング人気地域からこの階級にスター選手が誕生した時だと考えられます。
実際には、ボクシング人気地域の有力選手はこの階級には存在せず、めちゃくちゃな方法で作られた日本人不人気王者をかかえる最軽量級はもはやすべての可能性を失い、健全化と人気の確立は遠のくばかりですが、この惨めな状況を作ったのはもとはと言えば日本のボクシング界なのですから、自業自得と言うしかありません。
どのようなやり方でも王者を作れば人気が出るだろうという安易な発想のツケはあまりにも大きかったのです。
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コメント
本文中では認定料は「基本的に王者の収入に対するパーセンテージで決まる」と書きましたが、王者の収入が低い場合は団体が指定するミニマム料金が適用されるようです。
また、世界チャンピオンのベルトは30~40万円前後らしいですが、時期や団体によって一定しません。
これらの費用はチケットの売り上げだけではとてもまかなえず、世界戦の開催費用とともに、スポンサー、選手後援会、テレビ局などに出してもらうわけですが、女子はスポンサーも集まらず、後援会組織も弱体で、テレビ局もつかないため、実に苦しい資金繰りとなります。
地方の弱小ジムが女子世界王者を作ってみたものの、思ったような人気とはならず、防衛戦が負担となって途中で放り出してしまうのはこのためです。
人気や評価が定着する前に「王者にしてしまおう」という風潮は早く消えてほしいものです。