読者の皆さんからいただく質問の中にときどき「ムエタイの勝敗は試合前の予想で決まるというのは本当ですか?」というものがあります。
ムエタイにはギャンブルという側面がありますが、スポーツにお金を賭けるということは日本では馴染みがないので、どうも神秘というか、不思議なイメージがあるようで、こういう質問につながってしまうのかな、と思います。
でも、世界中で行われているほとんどのスポーツは、賭けの対象になっています。海外のビッグマッチの記事で「パッキャオの掛け率は○倍」とか「マンチェスターユナイテッドの掛け率は○倍」などというのは誰でも読んだことがあるでしょう。ムエタイだけが賭けの対象になっているわけではないのです。
で、オッズ(掛け率)というものは、試合の勝敗予想そのもので、勝ちそうな選手には低い掛け率、負けそうな選手には高い掛け率がつくのです。
つまり、勝ちそうな選手が勝った場合は少ししか払い戻さないよ、負けそうな選手が勝った場合は沢山払い戻すよ、という意味で、だからこそ、負けそうな選手にも高い払い戻しを目当てに賭ける人がいるわけです。
これがもしも、事前の勝敗予想の通りに結果が出るのなら、負けそうな選手に賭ける人はいないでしょう。そうなるとギャンブルは成立しません。ですから、予想によって勝ち負けが決まるということはありません。
試合の多くは事前の予想の通りの結果になります。しかしこれは、予想が当たっただけの話。予想に合わせて勝ち負けが作られるわけではありません。
もちろん、ムエタイの試合で勝ち予想がついている選手には、たくさん賭けている人がいるわけで、その分、会場の応援も盛り上がり、ジャッジの採点が甘くなる可能性はあるでしょう。でも、それだって、その選手が全然ダメなら勝ちになるようなことはありません。
会場人気がある方が接戦で有利になる傾向は判定のあるスポーツではよく見られることで、ムエタイだから、ギャンブルスポーツだからと思うのは見当違いでしょう。
ギャンブルスポーツというと、何かインチキっぽいイメージがあるかもしれませんが、実はほかのスポーツよりもインチキや不正は少ないのです。
一度インチキと疑われると賭ける人がいなくなってしまうのがギャンブルスポーツ。ですから、日本の競輪や競馬もそうですが、ムエタイもインチキには非常に厳しい処分がおこなわれます。
反対に、賭けの対象になっていない日本のボクシングを見ればよくわかりますが、そこでは、あからさまなカマセや、最初から結果のわかるカード、不合理な判定などが山のようにあっても、誰も処罰されないのです。
ムエタイはギャンブルだからこそ不正が少なく、真剣勝負であるのです。ダマされる心配無しに安心して見られる格闘競技スポーツ。それがムエタイだと思います。
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