華麗なパスが何度もつながり、鮮やかなシュートが何度も放たれますが、なぜかゴールマウスに嫌われて一本のゴールも無く0-0で試合終了・・・「サッカーに判定があれば勝ちだったのになー」ってありますよね。
ボクシングやキックでは、ガンガン手数出すけど当たらない、相手よりたくさん打つけどガードされてる、でも、相手の攻撃も当たらない・・・こんなときはいい攻撃をしている方が判定勝ちになることになっています。
でも、それはお互いに攻撃が「まったく当たらない」あるいは「同等に当たっている」場合だけ。
たいていの試合では命中打ゼロなんてありませんから、いくら少なくてもその「命中打の威力と数」いわゆる「有効打」で勝敗は決まります。
手数や試合運びはほとんどの場合は関係無いんです。
そういうと「え?」と思う人もいるでしょう。「手を出せ」は格闘技の基本ですから。しかし、コーチが「もっと手を出せ」というのは手を出せば判定が良くなるという意味ではなく、手を出さなければ試合のリズムが作れない、手を出すうちに相手の守りが破綻してそこに攻撃が当たり始める、だから手を出せ、相手に出させるなということなのです。
当てなければ、ガードを破らなければ、手数だけではポイントにはなりません。
日本の格闘技中継ではそのへんのところをきちんと分析しているところはほとんどないですね。でも、海外のボクシングや格闘技の中継では多くの番組でしっかり数値化して見せてくれています。
アメリカやヨーロッパ、最近は中国の中継でも、ボクシング、キック、MMAなど、大手のところは必ず画面に「出した攻撃の数」と「当たった攻撃の数」をちゃんとラウンドごとに表示するのが基本になっています。
「出した攻撃の数」がいわゆる手数、「当たった攻撃の数」が有効打。出した攻撃のうち何パーセントが当たったか、つまりヒット率も表示されます。
当たっただけでは無くて「強く当たった」いわゆるパワーショットの数を表示してくれることもあります。パワーショットは有効打の中でも「ダメージを与えた」と考えられる特に重要な要素です。
これが格闘技の採点方法です。日本でよく言われる「手を出していた」とか、「前に出ていた」とかは関係ありません。
もっとも、攻撃をカウントしたり、どれがパワーショットか判断しているのは人間なので、この数字が絶対の訳では無く、試合を見る上での指標、目安のひとつという感じですが、正式なジャッジも有効打を基準として判断をくだしているのです。
日本ではなぜ格闘技中継にそういう表示が出ないのかというと、たぶん予算の問題なのでしょう。けれど、おカネがありそうなとこでも全然やらないのは問題ですよね。
数字と違う判定が出た時に説明に困るということなのかもしれませんし、中継する側がジャッジを信用していないのか、あるいは試合の流れを合理的に説明できる人材がいないのかの、そんな感じでしょうか。
でもね、数値化して画面に出すのは予算的には無理でも、解説のひとはそのあたりをちゃんと説明しましょうよ。「当たらないとポイントにならないですよ」と。「当たってるのはこっちの選手ですよ」と。
いつまでも「見た目の印象」で試合を語っていると、日本の格闘技はそこから上に行けないような気がします。
「楽しかった」「すごかった」だけの興行スポーツを超えて、合理的なスポーツとしてのちゃんと明示できる指標を示せれば、一流のアスリートもこの分野をもっと目指してくれるようになると思うのですが。
・判定を決めるのは1.ダウン2.有効打
・1あるいは2がある場合は「試合運び」は無関係
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