このブログを開始したころ、QRをウーマンリブかなんかの関係者と勘違いした人がいたみたいで、わたしたちは「そんなバカな」と笑ってました。
だって、QRはスポーツブログです。それ以外の目的なんてありません。もしも、「主張」があるとすれば、それは「女子の立ち技は面白い!」ってことぐらいで。
そんなわけでわたしたちは、ウーマンリブにもその反対側にも、女にも男にも味方しません。同じ意味で、性同一性障害の人にも味方しません。
特定の誰かではなくて、日本のために、日本人全体のために、と思うことなら発言しますけど。日本人ですからそれは当然です。本来ならウチなんかじゃなくてまともなメディアが言うべきことでしょうけど、まともなメディアが無いですからね(苦笑)。
と、QRの立場を説明したうえで、きょうはトランスジェンダーと格闘技のお話です。
トランスジェンダーというのは「性別を越える」という意味。つまり、生まれつきの性別の壁を越えて、それ以外のところにいる人たちのことです。
その人たちはスポーツの場面でいろいろと制約を受けています。というのも、ほとんどの競技スポーツが生まれつきの性別にもとづいておこなわれているので、それ以外のひとの立場はむずかしいんですね。
特に格闘技では男と女が一緒に戦うことはありません。男子の体は女子に比べて、骨格や筋肉系その他、運動能力の面で大幅に上回っているので、男女が戦うことはスポーツ競技の公平性でも、安全管理面でも論外だから、当たり前ですね。
では、生まれつきの性と自分の性の認識が違っている人の場合はどうか。その場合も、身体上の性別で競技することになります。心で競技をするのではなくて、身体でするのですから、そうなります。
問題は、男として生まれ、性転換手術をして女になったひとが「女子競技に参加したい」という場合はどうなるのか。
このようなケースは西欧のスポーツ界ではいくつか例があって「人権意識」の観点などから、手術して「体つき」や「戸籍上の登録」が女性である人には女子アスリートとしての活躍を認めるべきだという動きが、すでにいくつも形になっています。
国際オリンピック委員会は、手術して、さらに特定期間のホルモン療法を受けて男性から女性になった人には女子選手としての活動を認めることを決めています。つまり、制度上は、オリンピックのボクシング女子には元男性のトランスジェンダーが出場出来るわけです。
しかし、この動きにQRは疑問を感じます。
男性は一般的に女子よりも筋力、骨格、肺活量などでアドバンテージがあります。それが手術を受けたあとはどうなるのか?
複数の医者や学者が、このアドバンテージは「性転換後ホルモン投与とともに数年を経過すれば失われる」と主張しているようです。オリンピック委員会はその学説をもとに判断をくだしたようです。
しかし、これは性医学や生物学で判断出来る問題なのでしょうか?その学問が競技上の公正さと安全性を保証出来るのでしょうか?
わたしたちは、スポーツの現場や、スポーツ医学からの意見こそが一番大事で、スポーツに関係のない学者のひとたちにはこの問題は守備範囲外と思います。
実際の格闘技の現場にいるUFCデイナ・ホワイト代表は「元男性の女子競技への出場はあるべきではない」という意見です。
UFCで女子チャンプだったロンダ・ラウジー選手も性転換選手の女子枠での出場はフェアじゃないと言っています。
第3の性に対しておおらかと言われるタイでも、女子ムエタイに元男性の選手が出た例は、QRはまったく知りません。
このように、現実の格闘技の世界では元男性の女子競技出場というケースは、認められない方向にあるようです。
これとは逆に、元女性で男性となったひとの格闘技出場はどうでしょうか?
元WBC女子世界王者の某アメリカ人選手はキャリアの最後のほうは性別のあやしい体つきになり、結局あるころから試合が組まれず、事実上のリタイアとなりました。詳しいことは分かりませんが、たぶん、男性化手術を受けて、女子ボクシングに出場出来なくなったのだと思われます。男性になったのなら、女子競技に出られないのは当たり前ですね。
しかし、某アメリカ人選手はそのあと男子のボクシングにも出ませんでした。手術を受けたとはいえもともとが女性の場合は、男性化してもフィジカル面での不利があまりにも大きいので、やっぱり出場はむずかしいのでしょう。
結局、手術を受けて別の性として競技することは、格闘技の世界では現実的ではないのです。
わかってほしいのは、これは、「差別」とか「世間の理解不足」という問題ではないということです。
どんなに力士に憧れていても、身長160センチのひとは大相撲の新弟子検査には受かりません。どんなに競艇選手になりたくても、体重100キロのひとは競艇選手の養成所には入れません。生まれ持った身体的な特徴によって、参加すら出来ず門前払いになってしまうスポーツがこの世にはいくらでもあるのです。
これが現実です。生まれついての生物学的な条件の前では、どんなに権利を主張しても無意味です。格闘技をやりたくても身体的な理由で無理な人なんかいくらでもいます。ダメなものはダメ。ただそれだけです。
生まれる前に戻って人生をやり直すことは出来ません。どんなひとでも与えられた条件で生きていくしかないのです。
最後に。格闘技と「男らしさ」は無関係です。心が男だから格闘技をしなければ、というのは思い込みにすぎません。つまんないでしょう、そんな人生は。男らしさや女らしさなんてものにとらわれるよりも、大事なのは自分らしさではないですか。性差よりも個人差でしょう。
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コメント
日本では、性転換後のパリンヤー選手が
女子選手と試合しましたよね・・・・
そうですね。パリンヤー選手のこと書いてませんでした。
パリンヤー選手は高田結選手とドロー。
ヒジ無し、顔面ヒザ無しルールで、顔見せ出場でしたね。
パリンヤー選手は中国女子とは3kgのハンディキャップマッチで負け。
スウェーデン女子には勝っているそうです。
本格的な女子競技への参戦はなかったのではないでしょうか。
パリンヤー選手の場合、性転換後に大幅な美容外科手術を受けたので
バシバシ打ち合うような激闘はもう出来ませんでしたし。
真道ゴー選手のことを語らなきゃならないですね。
手術を受けて男子選手としてボクシングを続けるとのことですが、男子選手に通用するのか(4回戦くらいなら何とかなるかも知れませんが)、手術のカラダへの影響はあるのか(医学のことはわかりませんが)とかが心配です。
昨年は女性同士の結婚が世間を騒がせたし(オーバーかな?)、真道選手には良き理解者にして最愛の女性もいるから、私としては今のままでも…と思うのです。
>北国の男さん 御意見ありがとうございます。
QRとしては、特定の選手が性別変更してもしなくても、ボクシングを続けても続けなくても、個人の問題なので関知しないです。でも、たった数十人しかいない日本の女子プロボクサーで、性別変更の意思を公言している選手はひとりだけではないようです。
でも、それって、順序が間違っているでしょう。
男としてのボクシングにこだわるなら、まず性別変更、それからボクシングではないですかねえ。
女子のボクシングに価値を認めないひとは、最初から女子としてデビューしないでほしいです。
いずれにしても、QRは女子のボクシングを認めないひとには関心ありません。