Boxing
2010年9月13日(月) 後楽園ホール
ザ・カンムリワシ・ファイト Vol.36
WBCミニフライ級(ストロー級)タイトルマッチ 10回戦
王者 アナベル・オーティス(メキシコ)
VS
挑戦者 菊地奈々子(白井・具志堅)
1回 菊地選手はこの階級の初代王者。オーティス選手は3代目の王者。後楽園ホールで実現した新旧王者対決に期待は高まりましたが…
ジャブを放ちながら動き回る菊地選手にオーティス選手が頭から接近してバッティング。
まるで被害者のような表情で痛がるオーティス選手。レフリーはタイムを宣言。10秒ほど経過してリスタート。
まっすぐの前進から接近戦を挑むスタイルの菊地選手にとって、オーティス選手に高速のジャブがあれば脅威だったと思われますが、さいわいオーティス選手の左は引き手を取らないで伸ばすだけのタイプか、重いけれども大きくて読みやすいタイプの2種類。
打ってくるタイミングはうまいのですが、鋭い右のカウンターをかぶせる勝負を挑めば勝機は充分にあるでしょう。
予定通りに接近戦を挑む菊地選手ですが、ここでレフリーが突然試合を止めてバッティング注意の指示。特にバッティングがあったわけでもないので選手たちは不思議そうにレフリーを見ます。
2回 先制ヒットは菊地選手の右。ここからチャンスを掴めるか?
さらに追う菊地選手ですが、王者は左を軽く当てると背中を向けて逃げるヒット&アウェイ戦法。接近戦が命の菊地選手はこれを徹底的にやられるとキツい。
3回 王者は密着しての押し合いで菊地選手の上体を立たせておいて、不意に下がると同時に素早い右。効果的な小技。
しかしひるまずに前進する菊地選手は打ち合いの中で右を当て、逃げる王者に左も追撃。
被害者のように痛がってレフリーからタイムをもらいますが、リスタート後も挑戦者に攻め込まれていいとこなし。
4回 開始直後の前進から右を当てて菊地選手が攻勢。
その直後、突っ込んできた王者の頭が菊地選手のアゴに激突。完全に意図的なバッティングですが…
レフリーは王者のバッティングを注意しないで菊地選手に「頭を押さえるな」の指示。わけがわかりません。
すると今度はオーティス選手が何もアピールしていないのに中村勝彦レフリーは菊地選手の攻勢を止めて「頭を上げろ」の指示。これでオーティス選手はピンチを脱出。
しかし、ここが勝負所とわかっている菊地選手は攻勢をゆるめず、さらに王者を追います。
ここで最初のオープンスコアの発表。メキシコ、韓国、日本のジャッジは三者とも39-37で王者を支持。メキシコのジャッジはともかく、前進するボクサーを評価する傾向のある韓国、そして日本のジャッジまで一方的に王者を支持するスコアは意外。
ここまでの内容でこの点差ではKO以外に勝ちはないでしょう。しかし、逃げる相手にKOは至難のワザ。沈鬱な空気が漂う場内。
5回 開始直後から菊地選手は変わらず前に出ます。
今回は「偶然のバッティング」かもしれませんが王者のリアクションがいちいち大げさで、それにあわせて試合も中断されます。
菊地選手の突進に苦戦する王者。オーティス選手は低いターゲットが苦手のようで、たびたび頭上を素通りする空振りを繰り返します。
菊地選手の顔があがったところをまって狙い撃ちするオーティス選手。
それでもプレッシャーをかけてロープぎわまで追い上げる挑戦者ですがこの左は相打ち。
6回 スタートダッシュでペースを掴む菊地選手。
その菊地選手を制止してレフリーが「頭をあげろ」の指示。先ほどからのバッティングのほとんどはオーティス選手が引き起こしているものですし、試合の流れを強引に止めてまでここで菊地選手に言うべきこととも思えません。
なんでこんなことになっているのか分かりませんが、この試合で一番目立っているのはふたりの選手ではなくて明らかに彼だということは確かでしょう。
オーティス選手がカウンターの左フック。
さらに打ってくるオーティス選手に菊地選手が右クロスをヒット。
菊地選手がワンツーを2発とも当てると…
オーティス選手はお約束のバッティング。そして、レフリーがタイム。
ピンチになった王者が自分からぶつけてタイムをもらう、そんな不思議な光景が何度も何度も出現する本日のリング。
再開後も菊地選手が押してこのラウンドは終了。
7回 スタミナが落ちる様子もなくプレッシャーをかけ続ける菊地奈々子選手。
さすがにこれ以上ごまかしのボクシングはまずいと思ったのか、このラウンドは王者もきっちりとジャブを打ち、当たりはじめます。
しかし、ある意味、これを待っていた菊地選手は右オーバーハンドでお返し。
王者も応戦しますが右カウンターをアゴにもらって打ち負け。
王者ピンチの時の定番、頭突き、アピール、タイムの三点セット。
菊地選手は両腕で王者にカモンと挑発しますが、噛み合うことはなくこの回も終了。
2回めのオープンスコアは69-64で圧倒的に王者のリード。
8回 大量リードの安心感と疲れからか、ぴたりと足が止まる王者。それを見て菊地選手サイドから「相手は疲れてるよ」の声。疲れている王者に一気にたたみ込めという意味かと思ったら「相手は休んでいるからこっちも休め」「回復してから戦え」との耳を疑う内容。
スタミナが武器の菊地選手に「休め」は武器を捨てろというようなもの。もちろん菊地選手は休まずに戦いますが、王者オーティス選手は完全に逃げパターン。
オーティス選手は接近戦から右のフックを空振りした直後に突然バッティングをアピールして時間稼ぎ。レフリーは例によってタイム。そりゃないよと言いたげな菊地選手。
9回 アリバイ的に出すリアクションジャブ以外は完全に動きをとめ、あとは終了を待つばかりという感じの王者。
ファイトしない相手を崩すことは普通は無理ですが、疲れている相手にはプレッシャーをかけ続けることで攻略の糸口となります。
10回 逃げ足の鈍いオーティス選手に襲いかかる菊地選手の右ストレート。
最後の好機が見えそうなその時、またもや必殺のアピールタイム。レフリーがタイムを宣言して15秒の中断。
試合再開後、最後の攻防戦。
菊地選手の右をよけきれない王者ですが、残された時間はあとわずか。
最後の10秒、ヘッドロックの体勢で挑戦者をとらえて終了のゴングを待つ王者。
WBCミニフライ級(ストロー級)タイトルマッチ 10回戦
○王者 アナベル・オーティス(メキシコ)
判定3-0
×挑戦者 菊地奈々子(白井・具志堅)
アナベル・オーティス選手の判定勝利。
公式結果は王者の圧勝。しかし、内容的には僅差、しかも技術的な攻防のない凡戦でした。
世界王者アナベル・オーティス選手はパンチの重さは感じさせるものの、コンディションが悪いのかスピードに欠け、ボクシング王国メキシコが誇るチャンプとしては迫力のないボクシング。
挑戦者の菊地選手は手数と有効打、アグレッシブネスで王者を追いつめますが、勝利を確定するまでの工夫は無く、こちらもいまイチの内容。
王者がバッティングをアピールするとレフリーが必ず試合を止め、たびたびタイムを入れる不可解な進行で流れはズタズタ。誰のホームか分からないレフリングとジャッジに静まり返る観客席。
このようなことが時折起きるのがボクシングなのですが、そのほとんどがノーテレビの試合のため、一般にはほとんど知られません。メディアも結果しか伝えないので不可解進行は闇に葬り去られるのが常です。1500人の観衆がいたと言っても何も言わない1500人ですから密室と同じ。
このような事態に直面しても挑戦者コーナーは終始「紳士的」で、何をされても声を荒げることもなくほとんどノーアピール。
メキシコ側は自分たちの選手がバッティングしているのにもかかわらず日本側の反則をアピール。減点を要求するジェスチャーなどでレフリーに圧力をかけ続けていました。それがいいことだとは言いませんが、これがタイトルマッチの実際なのです。
不条理なレフリングも、相手のアンフェアなファイトも、リングの現実。選手とファンと選手の身内は一丸となってそれを跳ね返さなければ勝利は得られません。
今回の日本サイドはまるっきりそれが出来ず、戦う集団にはほど遠いものでした。そういう意味で確かに負けでした。
以上の結果により両選手の戦績は次のようになります。
WBCミニフライ級(ストロー級)王者
アナベル・オーティス(メキシコ) 8戦7勝1敗1KO
OPBF東洋太平洋ライトフライ級王者
元WBCミニフライ級(ストロー級)王者
菊地奈々子(白井・具志堅) 17戦12勝4敗1分5KO
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コメント
はじめまして。ひどい試合ですね。相手がメキシコ人だからWBC本部に気を使ってるんだろうか。それにしてもひどい。
レフリーのレベル低すぎ