Boxing
2011年5月8日(日) 後楽園ホール
WBCミニフライ級タイトルマッチ 10回戦
王者 アナベル・オルティス(メキシコ)
VS
挑戦者 藤岡奈穂子(竹原&畑山)
昨年9月の対菊地奈々子戦に続いて後楽園ホールで防衛戦を迎えるWBCミニフライ級王者アナベル・オルティス選手。余裕の表情で入場です。
第1ラウンド おたがい距離をとってまずは慎重な立ち上がり。50秒をすぎたころ、両者の頭が接触すると、アナベル・オルティス選手は昨年9月の初防衛のときと同じように「痛ーい」という表情を作って一方的に被害者のように大げさにアピール。
これで藤岡選手に警告がおこなわれたり、あるいはタイムが与えられて試合が中断するとなれば、挑戦者ペースの試合とはなることはむずかしく、オルティス選手がなんとなく判定で防衛という流れになる可能性大。実際に、昨年の対菊地奈々子戦ではオルティス選手がバッティングをアピールするたびに中村勝彦レフリーが何度も何度もタイムを与えてオルティス選手が望むような試合展開となり、防衛に成功しています。
しかし、今回の試合を裁くのは女性国際レフリーのシン・キョンハさん(韓国)。彼女はオルティス選手のアピールに応じること無く即座に試合続行を指示。オルティス選手は仕方なくアピールをやめて試合に戻ります。
一方、藤岡選手はこの第1ラウンドからシャープな左を命中させるなど調子がいいようです。
第2ラウンド 前に出て行く藤岡選手、距離を置きたいオルティス選手という流れ。1分過ぎにはオルティス選手がするどい左を放って藤岡選手を牽制しますが、これにひるまず前進する挑戦者。
後半は相手にきれいなボクシングをする余裕を与えまいと両者ともに密着して距離をつぶし合う場面が増えます。こういう駆け引きも勝負の一要素。やや、オルティス選手のペースでしょうか。
第3ラウンド 試合序盤の探り合い、主導権の奪い合いの展開からそろそろメリハリのある打撃戦に移行したい挑戦者の藤岡選手ですが、王者オルティス選手は依然として、クリンチや膠着ブレイクなどで時間をつぶす作業を続行。
密着距離での顔面をこするようなパンチや、クリンチしながらのラビットパンチ(後頭部パンチ)など、オルティス選手が得意とする汚いボクシングに藤岡選手の表情にいらだちの色が見え始めます。
第4ラウンド 極端に頭を低くして密着してきたり、突然大振りの右を打ってくるなど、変則的な動きのオルティス選手。藤岡選手はそんな動きに影響されたのか、ジャブを忘れていきなり強打を放つなどの大味な動きになっていてあまりいいボクシングではありません。
しかし、1分40秒にオルティス選手が右を大きくスイングした瞬間、それに合わせて藤岡選手がきれいなカウンターをヒット。
ここで1回めのオープンスコアの発表。三者とも38-38でドローというアナウンス。
第5ラウンド 序盤のポイントリードに失敗した王者は、ポイント獲得のためにどこかで山場を作らなければなりませんが、藤岡選手の圧力の前にずるずると下がる場面が多く、あきらかに防衛プランが崩れはじめています。
1分15秒、ロープ際に下がった王者の顔面に藤岡選手の左フックがヒット、続いて強烈な右ストレートが突き刺さり、オルティス選手はたまらずその場にダウン。
しかし、足もとは安定せずすぐにスリップダウン。あきらかにダメージは大きく、王者絶体絶命のピンチ。
第6ラウンド 試合は挑戦者有利の状況で後半に突入。真っ向勝負では分が悪い王者はジャブを打ちながら下がり、クリンチやバッティングアピールなどで抵抗を見せます。極端に頭を下げるなどして打ち合いを避ける王者にいらだちを隠せない藤岡選手。
第7ラウンド 逃げ続ける王者は、藤岡選手の靴ひもを結び直すように要求したり、みずからマウスピースを吐き出してコーナーで入れ直すなどの時間かせぎ。苦しい試合展開の中で悪あがきを続けるオルティス選手。
ここで2回めのオープンスコアは三者とも68-64で挑戦者の藤岡選手が大量リード。
第8ラウンド 王者オルティス選手は左ジャブから右のスイングにつなげて最後の反撃に出ます。しかし、ジャブには鋭さがあっても肝心の右がズサンで脅威にならず、結局はクリンチの展開に。
そんな8回の終了間際、左を出しつつ下がる王者に、ニュートラルコーナーで追いついた藤岡選手の強烈な右ストレートが炸裂。崩れ落ちる王者。必死に立ち上がったところでラウンド終了。
9回開始の時間になりますが、オルティス選手はフラフラとリングをさまよい「足をケガして試合が出来ない」というアピール。
レフリーが試合終了を宣言し、試合は8回終了時TKOで藤岡選手の勝利。
演技派王者のパフォーマンスに振り回される場面もありましたが、最後はキッチリと実力を見せつけての完全勝利。藤岡奈穂子選手、見事な世界王座奪取でした。
日本の女子ボクシング界に新しい歴史を切り開く期待の新王者の誕生です。
今回の力強いボクシングと、前回の対柴田直子戦で見せた緻密な試合展開を合わせれば、新王者藤岡奈穂子選手がこの階級を長く支配出来る強力な王座を築く可能性は非常に大きいでしょう。
今後の活躍に期待します。
WBCミニフライ級タイトルマッチ 10回戦
×王者 アナベル・オルティス(メキシコ)
TKO 8回終了
○挑戦者 藤岡奈穂子(竹原&畑山)
藤岡奈穂子選手のTKO勝利。WBCミニフライ級新王者に。
(5回と8回にアナベル・オルティス選手ダウン)
今回の結果を含む両選手の戦績は以下のとおりです。
アナベル・オルティス(メキシコ)9戦7勝2敗1KO
藤岡奈穂子 ふじおかなおこ(竹原&畑山)6戦6勝4KO
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コメント
初めてコメントさせてもらいます。藤岡選手の試合はみていて本当最高の試合でした。今後、何度も防衛してくれる事でしょう。
柴田選手の詳細も楽しみにしています。
コメントありがとうございます。本当にうれしい勝利でしたよね。今後の活躍に期待しています。
今回はレフリーがマトモな人で良かったよね。
これからもずっと今回のレフリーがいいと思います。