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試合時間の半分近くがクリンチ 松田恵里 VS 鈴木菜々江 東洋/日本 変則2冠戦 試合経過 VICTORIVA Vol.4 ボクシング女子

2019年3月13日(水)東京 後楽園ホール
VICTORIVA Vol.4

第7試合 OPBF東洋太平洋アトム級タイトルマッチ/日本アトム級タイトルマッチ 8回戦
松田恵里 まつだえり(OPBF王者/TEAM10COUNT)赤
VS
鈴木菜々江 すずきななえ(日本王者/シュウ)青

 東洋太平洋はA級ライセンスの8回戦、日本女子王座はB級ライセンスの6回戦、カテゴリーが違うので統一なんか出来ないのに、無理くりデッチ上げちゃった『統一戦』が今回のヘンなタイトルマッチ。

 赤コーナーは今回の『統一戦』を望んだ松田恵里選手。これが彼女にとって東洋太平洋の初防衛戦になります。

 当ブログの読者の方ならご存知の通り、この東洋太平洋王座の決定のいきさつがインチキで、彼女が12月に東洋太平洋王座決定戦に出た時、松田選手はまだA級ライセンスを持っていませんでした。相手の選手もB級しか持っていませんでした(A級だったという証拠があれば見せて欲しいですし、JBCさんはプロ2戦目の松田選手にA級ライセンスを認めた理由を説明するべきです)。

 このような無資格挑戦がなぜか認められてしまうのが今の日本の女子ボクシングです。潔癖な運営を好む日本人がこんなスポーツを愛好するでしょうか?不人気なのは当然でしょう。

 青コーナーは日本アトム級王者の鈴木菜々江選手。今回が自身の日本王座の3度目の防衛戦で、初の東洋太平洋挑戦です。

 松田選手は鈴木選手の王座を前から狙っていましたが、鈴木選手は前回の防衛の相手には松田選手ではなく、当時松田選手よりも上位の相手を選んで勝っています。

 その後、松田選手がインチキで日本王座を飛び越えて東洋王者となり、鈴木選手より上位になりましたが、まだ鈴木選手のベルトを望んだため、このような歪んだタイトルマッチとなりました。

 東洋取ったなら、次は世界を目指すべきで、日本王座を欲しがる意味が分かりません。アマ出身なのでプロのベルトの序列を知らないのか、あるいはベルトならなんでも欲しいのでしょうか?

 ふたりを紹介するのはJBC公式リングアナウンサーの須藤尚紀氏。「須藤アナの紹介が長い方の選手がだいたい勝つ」という説が否定できない今日この頃・・。松田選手の疑惑のプロデビュー戦(対戦相手の葉月さな選手の勝ちと思ったボクシングファン多数)もこの人のアナウンスで、松田選手の紹介のほうが長かったのです。

 この日は松田選手には「エリート・ボクサー」「ザ・スピード・スター」というカッコいいキャッチフレーズが2個も付いていたのに、鈴木選手には何も無しという分かりやすさ(苦笑)。

 試合序盤、慎重に低い姿勢から頭を左右に振りながら接近する鈴木選手。

 近付いた鈴木選手がフック系で打ちかかると松田選手はまっすぐにジャブで応戦。外に開く軌道と直線では直線の方が早く確実に当たるので、フックは不利ですね。

 まっすぐに打てば鈴木選手のパンチも命中するのですが・・

 すうっと距離を置く松田選手を追いかけるうちに、どうしても力が入って大振りになってしまう鈴木選手。これでは当たりません。

 接近するとパンチを出さずに掴んでくる松田選手。相手のからだを抱きかかえるクリンチは、相手の動きを制してパンチを打てなくする正当な技です。しかし、腕を押さえたり、首をねじったりするのは反則。警告の対象ですね。

 しかし、レフリーは何も言わずにただ見ています。そしていくらか時間が経ってからやっとブレーク。

 ブレイクになると松田選手は足を使って離れ、鈴木選手が追いかけて接近するとまたクリンチ。同じような場面が続きます。

 鈴木選手が入ってくるところをパンチで迎える松田選手。鈴木選手の大振りフックとは違って、一直線にスーっと打ち込む松田選手のパンチは見た目にいかにも「攻撃してます」という感じで、応援団が沸くのですが、よく見るとガードの上を叩いていたりで実は確実性は高くありません。

 遠い距離から打つので、このようにハズされることも多いです。日本のアマチュアボクシングは距離が詰まるとすぐ止めてしまうので、離れた距離でのパンチだけでもいいのかもしれませんが、プロならもっと接近して当てないと。松田選手はまだ全然アマのボクシングだと思います。

 接近するとすぐに掴んでレフリーのブレイク待ち。鈴木選手の方から掴みに行くことも多いので、クリンチの多さはお互い様なのですが、鈴木選手はクリンチ中も必死でボディを叩くのですが、松田選手はただ時計を見るだけで何もしません。鈴木選手の細かいボディー打ちが有効打に取ってもらえない可能性を見越しているようです。

 こんな感じで前半が終わって、途中の採点はやはり39−37がふたりと40−36という大差で松田選手のリード。このまま行けば後半も松田選手でしょう。

 あとがない鈴木選手は思い切った攻撃に出ようとしますが、そのぶん動作が大きくなるので狙われてしまいます。

 鈴木選手も当ててはいるもののクリーンヒットがほしいところ。

 接近して1〜2発打つか打たないうちにクリンチになるので、両選手ともパンチのチャンスは非常に限られます。

 どのラウンドもクリンチがやたらと多く、短いラウンドでも45秒、長いラウンドでは60秒近くがクリンチで消費されます。

 女子は1ラウンドが2分なのですが、これでは正味1分という感じです。

 松田選手がアッパーをミスったスキに打ち込む鈴木選手。焦っているのかナックルが当たらない半端なカタチ。こういうところで力まないで打てればいいんですが・・。全体にこの日の鈴木選手は力が入り過ぎてましたね。

 少し打たれるとすぐにクリンチなので、打撃チャンスは無駄にできません。

 でも、鈴木選手は焦れば焦るほど振りが大きくなり、まっすぐ打つ松田選手のほうがどんどん有利に。

 一瞬打ち合ってはまたクリンチ。もうお腹いっぱいです。

 突っ込んでくるのが分かっているので松田選手は狙いやすいですね。

 鈴木選手も時おり力まないで打つとこういう場面を作れるのですから、もう少し冷静なら効果的なパンチも生まれたでしょう。自分から追わないで相手が出るように仕向けるとか、ショートアッパー散りばめるとか。変化がほしかったです。

 ・・まあ、前半の大して差が無いラウンドで、松田選手に大量のリードを付けるジャッジですから、冷静になれという方が無理なんですけどね。

 第7ラウンドの鈴木菜々江選手。結局、こういう場面が目立つ試合になってしまい、判定を引き寄せることはできませんでした。

 判定は3−0で松田選手の勝利。 松田選手が今後いい選手になる可能性は大いにありますが、それは「ちゃんとボクシングすれば」の話で、こんなクリンチショーばかり繰り返すのでは成長は難しいのではないでしょうか。 いいプロボクシングとはどういうものかというビジョンを持ってほしいです。「勝てばいい」で10年世界王座にいても超絶不人気で終わった同級の先輩のことを学んでください。

 この結果、日本アトム級王座は、東洋太平洋女子同級王座と『統一』されたらしいので、日本アトム級王座(B級)に挑戦したい人は同時に東洋太平洋(A級)にも挑戦することになります。

 つまり、A級ライセンスが必要なわけです。

 もともと女子育成のためにつくられたのが日本女子王座ですから、本当はB級の選手にも挑戦資格があります。

 しかし、アトム級は上の東洋に『統一』されたため、B級ライセンスだけの選手は挑戦できなくなりました。

 つまり、この試合の前までは8人の挑戦資格者がいたのですが、この中のB級の4人(モンブランみき葉月さな青木沙耶香小村楓香)の挑戦資格が消滅しました。現在は、石川海荒瀬あかり神田桃子慶美奈代の4選手だけが挑戦資格者です。

 石川選手はあんな感じですし、神田選手は現役なのかどうか不明、慶選手は前の試合で松田選手に負けたばかり。つまり、荒瀬選手しか挑戦資格者はいなくなりました。

 これで女子ボクシングが盛り上がるんですか?

第7試合 OPBF東洋太平洋アトム級タイトルマッチ/日本アトム級タイトルマッチ 8回戦
○松田恵里 まつだえり(OPBF王者/TEAM10COUNT)
判定 3−0
×鈴木菜々江 すずきななえ(日本王者/シュウ)
松田恵里選手の判定勝利
(78−74、78−74、79−74)

松田恵里 まつだえり(TEAM10COUNT)3戦3勝(うちタイ人0)
鈴木菜々江 すずきななえ(シュウ)12戦8勝(うちタイ人0)3敗1分1KO(うちタイ人0

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コメント

  1. 若鷹 より:

     今回の試合に至った経緯については、あまり興味はありません。
     鈴木菜々江が対戦した松田恵里が、どれだけの実力者なのかが注目される試合でしたね。だが、フタを開けてみるとアマチュアでは実力者ではあったみたいだけどプロでは通用しない可能性だってあるかもしれないね。松田恵里は過去の鈴木菜々江の試合を見て、ワタシだったら勝てると思ったのでしょうかね。本人の思惑通り勝てましたが、海外には強い選手がゴロゴロいますから、今までのような試合ではプロではアマチュアのようにうまくないかないとの先行きも感じられそう。
     この結果を受けて、仮に松田恵里が日本タイトル初防衛戦を戦う展開となれば、ランカーで挑戦できる選手は4人になるみたいだけど、このシナリオとなれば対戦相手は石川海になる公算が濃厚。しかしながら、神田桃子は過去に1年以上の長期ブランクで試合をした事例もありますから、松田恵里が対戦相手ならば「こいつなら勝てる」と思ってリングに戻ってくることだってないとは否定できませんね。
     私の予想では、松田恵里は初防衛戦を戦わずに日本タイトルを返上すると見ていますから、タイトルマッチ挑戦資格のあるB級選手も近いうちに日本タイトルマッチへの挑戦。できるのではないかと見ていますけど・・・。

    • queensofthering1 より:

      >若鷹さん コメントありがとうございます!
      松田選手が防衛戦をしないで日本タイトルを返上する可能性はありますね。
      というか、東洋を持ってる彼女にはなんの関係もない王座なのですから、1日でも早く返上するべきだと思います。
      本当は防衛しない王座は最初から取るべきではないのですが(空位だったのならまだしも)、今回はもうなんでもいいから手放してほしいです。
      8人の挑戦資格者(鈴木元王者も入れると9人)のために返上するべきです。
      松田選手が持っていても生きない王座なのですから。

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