Boxing
2013年6月24日(月)東京 後楽園ホール
第44回 フェニックスバトル
WBAライトミニマム級挑戦者決定戦 8回戦
黒木優子 くろきゆうこ(ユーケーオー)
VS
花形冴美 はながたさえみ(花形)
6月24日、この日のメインはWBAライトミニマム級タイトルマッチでしたが、その勝者への次の挑戦者を決める試合が、同じ日のアンダーカードでおこなわれました。赤コーナーは黒木優子選手(ユーケーオー)。前回はWBAミニマム級王者多田悦子選手に挑戦して敗れ、今回は階級をひとつ落として挑戦者決定戦からのやりなおしです。
青コーナーは花形冴美選手。強引な突破と果てしないスタミナを売りにするファイターですが、昨年12月にWBCアトム級(WBAライトミニマム級と同階級)の王者小関桃選手のタイトルへ挑戦して失敗、再起戦ではミニフライ級の池原シーサー久美子選手に判定で敗れ、初の連敗を体験中。
入場直後、相手コーナーに近付いて挑発する花形選手に黒木選手も厳しい表情。一瞬、リング上に緊張が走りますが、
第1ラウンド サウスポーの黒木選手と、オーソドックスの花形選手。黒木選手は盛んに右のジャブを打っていきます。
花形選手はいつものとおりのワイルドスタイルで右を振り回して突進。
黒木選手の最大の武器は左のストレートですが、それを打ち込む決定機を作る役目の右のジャブが弱いのが最大の課題。それを克服する練習をだいぶ積んでいるらしく、右を多めに打っていきます。
黒木選手はたしかに右を意識的に使っていますし、その軌道も以前より良くなっています。しかし、それはガタガタだったフォームが少し整いはじめたという程度のことで、牽制・制圧の威力を持つジャブの完成にはほど遠く、花形選手は黒木選手の右をまったく気に留めるふうもなくガンガン打ち込んで前進。
そして簡単にロープに詰められて防戦一方。初回から花形選手が優勢です。
第2ラウンド この回も状況は変わらず、ジャブを打つ黒木選手とそれを無視して突き進む花形選手という構図。
バックステップ中の黒木選手に右を当ててのけぞらせるなど花形選手が圧倒。
第3ラウンド この回も右を振るって前に出るブルファイター花形選手。
このままいけば「普通にやっても攻略出来ない相手には左を連打して押し切る」という黒木選手の勝ちパターンなのですが、この日の黒木選手の左は威力、正確性ともイマイチで、花形選手にダメージを与えることが出来ません。
第4ラウンド 黒木選手は左ストレートに続いて左アッパーカットでの迎撃を想定していたらしく、なんどか距離を測るような動きを見せますが、
怒濤の勢いで攻めて来る花形選手に合わせることが出来ずに不発。
第5ラウンド 右ジャブ、左アッパーで戦う黒木選手ですが、カタチだけでインパクトやパワーがともなわず、花形選手の前進力の前には無力という感じ。
花形選手の攻撃もフォームがメチャクチャで狙いも定まらない強引一辺倒なものですが、接近戦を苦手とする黒木選手を押し込むにはこれで充分のようです。
第6ラウンド ポイントでリードされているのが明らかな黒木選手は前に出るしかありませんが、これは打ち合いを好む花形選手には好都合。
そのあとで左を出してもワンツーにはなりませんからほとんどヒットしません。
明らかにヒット数で上回る花形選手ですが、ダメージを与えたかどうかは疑問。派手な大振りなので当たった時の印象は大きいものの、力が拳に伝わるフォームになっていません。たぶん相手はノーダメージですね。
第7ラウンド 強引に踏み込みながら乱打戦を仕掛ける花形冴美選手。
第8ラウンド 最終回も体ごと突っ込んで行くような花形選手のファイト。
形は悪くてもとにかくパンチを当てることを最後まで継続した花形選手。
手を上げられた後にはすぐに黒木選手に挨拶に行った花形選手。スポーツウーマンらしいさわやかな場面ですが、両者とも試合内容には多くの課題があったと思います。
黒木選手は所属ジムの移籍などの関係からかしばらく活動が滞っていた次期がありますが、本来なら新人のうちに克服されているべき問題(右と左の極端なアンバランスと基本的な打撃フォームの改善)にいま手をつけている段階にあるようです。
花形選手に勝った池原シーサー久美子選手のように黒木選手がしっかりジャブを打てていれば結果は変わっていたはず。
黒木選手は前の試合から短期間ではありますが、少しずつ改善していることは明らかでしたので、今回の結果をどうこう言うよりも、これからを期待したいと思います。
多くの選手を見てきましたが、かなりのベテランになってから飛躍的に伸びる選手もたくさんいました。黒木選手の若さならまだまだ伸びしろは充分すぎるくらいあります。期待しています。
連敗を脱出して勝利を掴んだ花形選手ですが、内容的にはこれで良しとは言えないのは明白。たくさんのパンチを当てたわりにはクリーンヒットと言えるものは少なく、また、それだからこそ相手にダメージを与えることも出来ませんでした。
この試合に限らず、花形選手はとにかく当てることを優先して、いま手のあるところから最短距離で打つのでいわゆる「手打ち」となり、さらにナックルもキチンと当たってないので威力がありません。彼女のようなファイタータイプがここより上に行くには「効かせるパンチ」は必須要件。早急に改善が必要でしょう。
WBAライトミニマム級挑戦者決定戦 8回戦
×黒木優子(ユーケーオー)
判定 0-3
○花形冴美(花形)
花形冴美選手がユナニマスデシジョンで勝利し、次期挑戦者の座を手にしました。
(74-79、75-78、75-77)
この試合のすぐあとにWBAライトミニマム級チャンピオン宮尾綾香選手の所属する大橋ジムの大橋秀行会長が「宮尾綾香とホン・ソヨンの統一戦の話がきている。実現させたい。」と語ったようですが、次の挑戦者が花形冴美選手に決定した直後に他の選手の名前を出すのは大変失礼な話。大橋会長の真意が分りません。
次が花形選手ではなくてホン・ソヨン選手になる、と言っているわけではないので、将来の話として言っているのかもしれませんが、それにしても試合直後に語ることではないでしょう。
また、「統一戦」というのが意味不明です。ホン・ソヨン選手はWBOの世界王者ではありますが、宮尾選手よりも一階級上のミニマム級の選手なのです。違う階級のベルトを統一出来るわけがありません。
過去に日本では一向に人気の出ない女子のボクシングに焦った関係者が多田悦子選手と富樫直美選手の「階級を越えた統一戦」というワケのわからないことをやって、外国の人たちから「VERY STRANGE(とっても変)」と言われたことがありますが、そのような恥ずかしいことは二度と繰り返さないようにお願いします。ボクシングはルールのあるプロスポーツなのです。話題性だけの見せ物ではないのです。
この結果、両選手の戦績は以下のようになります。
黒木優子 くろきゆうこ(ユーケーオー)13戦9勝4敗5KO
花形冴美 はながたさえみ(花形)13戦8勝4敗1分3KO
関連記事 多田悦子 VS 黒木優子 WBAミニマム級タイトルマッチ 詳細 G-Legend 5 ボクシング女子
コメント
今日わ 花形会長も諦めた感じですね・・ 率直に言ってIFBAバクに比べて小関(おなじみ)や宮尾(キャリアの内 外国人とは一戦のみ)のマッチメークは首を傾げざるをえないのですが・・・
WBO関連の話題をいくつか アクーニャ×Mヘルナンデス 結局NON戦になったみたいです 試合まで油断できませんが笑
ボップ 根回しがきいたのか笑WBA WBO共に剥奪をまぬがれトクタロヴァと防衛戦です 男でも最近は許可をえればNON戦等で負けても剥奪をまぬがれてますが・・・ ボクサー本人やファンはどう思ってるのでしょう なんか虚しいですよね笑
ベルムデス WBO B級王座の方は破棄したみたいです SF級王座デュウエルがドローにおわった前戦に続いてB級決定戦にでます まあこれで正暫戦前にスッキリしたわけですが疲れますよね笑 日本人は細かいから笑
黒木が一階級下げて花形と対戦とは、
何だか強い相手から逃げている様です。
このへんの階級の女子は頻繁に階級を上下してるから深い意味は無いんじゃないでしょうか。
ホン選手には8月に安藤選手が挑戦することが決まったみたいですね。
それはともかくとして 宮尾vsホンというマッチメークがもし実現するなら
それ自体はいいことなのではないかと思います。
王座の取り扱いをどうするとかいう問題はありますが
少なくとも強い選手ときちんと試合をするというのは良いこと。
いっこうにまともな相手と戦う気配もないまま、謎の防衛記録をどんどん伸ばしている誰かさんのことを考えれば・・・ねえ。
黒木は元々アトム級。