今では考えられないことですが、2008年以前の日本では、本名・年齢が非公開とか、年齢は公開しているけれど、本当の年齢かどうかあやしい、みたいな女子ボクサーが何人もいました。というのも、当時は全部をちゃんと公開する義務がなかったからなんです。
その時期、日本女子ボクシング協会が活動していた頃は、ボクシング専門の選手だけでは興行が維持出来ないということで、プロレスの選手にも参加してもらっていた都合上、ファンタジーを大事にするプロレスの事情に合わせて、個人情報の開示はほとんど無かったのです。
しかし、これは例外的なことで、一般的に競技スポーツはどこでも競技者の名前や年齢はキッチリ公開されるもの。これは、選手が本当にその人であること、つまり、替え玉ではないことを示すために最低限必要なことだからです。
19世紀末のアメリカに、キッド・マッコイというボクサーがいました。この人は人気チャンピオンだったため、全米のいろんなリングに『マッコイ』を名乗るニセモノ選手が登場して試合をしていたそうです。テレビもネットも無い時代でしたから、ニセモノもやりやすかったのでしょう。おかげでボクシングファンはかなり混乱したとか。
それ以降、「本当の本物」と言いたいときには『リアル・マッコイ』という言葉が使われるようになったほど、マッコイ選手にはニセモノが多かったんですね。
しかし、ニセモノ・替え玉事件は現代ボクシングでも起こっています。1984年には韓国でIBFのタイトルマッチに出場した挑戦者がニセモノで、大事件になりました。
2001年には日本でOPBFタイトルマッチの挑戦者がやはりニセモノで、関係者さんが罰則を受けています。
このようなことがある以上、選手はちゃんとリングネーム以外にもパスポートに書いてある本名と生年月日を公開しなければならないんです。
むかし、ある選手がリングネームを変えたので前のリングネームと新しいリングネームを並べてブログ記事に書いたところ、以前のネームは本名なので書かないでください、とメールをいただいたことがあります。
でも、それはまったく無理な話。通算戦績というものがある以上、誰がどんな名前に変えたのかはどうしても書く必要があります。そもそも、プロテストのときに本名は公開されているので、そのあとに隠しても意味はありませんし。
女子ボクシング協会時代の話題に戻ります。当時は、多くの選手がかなり短いシンプルな名前を使っていました。たとえば天海ツナミ選手を例にあげれば、単に『ツナミ』というリングネームでした。現在、彼女は『天海ツナミ』または『Tsunami Tenkai』というフルネーム表記を使用しています。
これは、JBCさんの決まり(姓だけ名だけのリングネームは不可)に従っての変更なんですが、このようにファーストネーム『Tsunami』とラストネーム『Tenkai』を必ずセットで名乗る形式は、海外では当たり前のことで、リングスポーツの常識。国際基準に合わせたものなんですね。
かつて、立ち技格闘技界トップの実力者だった早千予選手は、国内ではボクシングでもキックでも『早千予』というリングネームで通しましたが、海外での試合のときは『Sachiyo Shibata』のフルネームでリングにあがりました。『プリンセス・オブ・ペイン/Princess Of Pain』というキャッチコピーもカッコよかったですね。
現在、日本のボクシング選手は全員がフルネーム形式になっていますが、キック系選手では、男子も女子もファーストネームだけの短いリングネームがけっこう見られます。でも、それらの人たちも海外での試合のときには、ファーストネームだけでは不都合ですので、いまのうちから海外用のリングネームを考えておいたほうがいいでしょう。
面倒ならうしろ半分をムエタイ選手のように所属ジムの名前にしてしまうこともありかもしれませんが、とにかく外人さんが覚えやすくてカッコいいリングネームを考えておくことは大事です。ミドルネームやキャッチコピーも考えておいて損はありません。いつ海外から呼ばれるかもしれないんですから。
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