近代化される以前のボクシングはベアナックルファイトと呼ばれ、グローブ無しで戦っていたことはみなさんご存知だと思います。
当時のボクシングはラウンド無制限で、決着が付くまで1時間も2時間もかかることは珍しくなく、なかには延々5時間とか6時間という試合もあったようです。
これは簡単に言えば、当時のボクシングではなかなかノックアウトが生まれなかったということでもあります。
これでは試合をする選手も大変ですが、見ているお客のほうも大変で、試合時間短縮の何かいい方法が必要とされました。
そんなとき、ある人が「馬の毛を拳にまいて殴ると簡単に相手を倒せる」というケンカの必勝法をボクシングに導入することを思いつき、馬の毛を詰めたグローブを開発したそうです。
このグローブの登場はボクシングにとって革命でした。グローブをつけると素手のときとは比べ物にならないような破壊力が生まれ、ダウンシーンやKOシーンが量産され、試合も短くコンパクトになり、人々はグローブボクシングに熱狂しました。
グローブでこのような大きな破壊力が生じる理由は以下の3つです。
1拳がグローブで守られるので力いっぱい相手を殴れる。
2拳がグローブの重量の分だけ重くなるのでパンチのエネルギーがその分増加する。
3グローブの着用により命中時の標的と拳の密着性が高まり、パンチのエネルギーを標的(相手の脳)に無駄なく伝達出来る。
グローブ時代になり、以前のような素手で殴り合うことによる激しい顔面裂傷や、失明、拳の骨折などは少なくなりました。
そのため見た目の残虐性や凄惨性は低くなり、一方、ダウンやノックアウトのスリルが増えて、ボクシングの人気は高まりました。
しかし、グローブによって強化されたパンチ力により、打たれた選手が亡くなる重大事故が発生するようになったのです。
グローブは「倒すための武器」です。安全のために作られたものではありません。
現在も外国製プロ用グローブには馬のシッポの毛が詰められ、ケンカの「武器」としての歴史を今に伝えています。
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