Boxing
2011年11月30日(水) 東京 後楽園ホール
G-Legend4
WBCアトム級タイトルマッチ
王者 小関桃 こせきもも(青木)
VS
挑戦者 伊藤まみ いとうまみ(イマオカ)
第1ラウンド この試合はインファイトを狙うのが伊藤選手で、アウトするのが小関選手となるだろう、とふだんのファイトスタイルから当然のように予想していたのですが、序盤、伊藤選手がアウトボクシングからスタートしたのには驚きました。伊藤選手がバックステップで距離を取り、小関選手が追いかけながらパンチを出しています。これはどのような展開になるのか予断をゆるしません。
第2ラウンド 距離のあるところからいきなりの右やボディーを打っては離れていく伊藤選手。小関選手も同じように距離を詰めては左ストレートを打ち込んできますが、小関選手は単打で終わらずほとんどの場合連打になっているようです。
しかし、小関選手、左ストレートはいいのですが右がまったくパンチの形になっていません。この人の右は通常のボクサーのリードブロー(ジャブ)の役目をハナから放棄していて、相手のパンチをたたき落とすこと(パリー)と、相手の目の前に手を伸ばして視野や距離感をかく乱するのが主な目的となっているようです。
その時に、小関選手はまず手のひらを相手に向けるような形で右手を伸ばし、その後まっすぐ戻さずに手首のスナップを効かせて引っかくような動作で下に振るのです。これが見ていて非常に危ない。サミングになる可能性があるし、グローブの手のひら側が相手に接触すれば皮膚が切れる可能性もあります。非常にダーティーな動作と言えます。もちろん本人には悪気は無く、単なるクセだと思いますが、このひどい動作をレフリーが注意しないのもトレーナーが矯正しないのも以前から不思議でした。今さらもう直らないでしょうけれど。
第3ラウンド また小関選手は右腕でガードをする際にヒジが危険な角度で前に出てくるという悪いクセもあります。そのままの体勢でヒジが動かないのならまだしも、静止しないでヒジが何度も上下に動くのです。キックのタテヒジのような軌道で右のヒジが前方に向かって突き出されるので事故のもとになる可能性が高いです。
試合は伊藤選手が動きながら打つボクシングを維持しているものの、小関選手が伸びのいい左ストレートでいい印象を与えてポイントリード。
第4ラウンド このラウンドもアウトボクシングを続ける伊藤選手ですが、不意に伸びてくる小関選手の左ストレートでポイントを失います。
ここで最初のオープンスコアは39ー37、40-36、40-36で、三者とも小関選手。
第5ラウンド 伊藤選手が時計回りに動きながらボディーブローにトライ。ワンツーも積極的に出しますが小関選手を崩すまでには至らず。
第6ラウンド この回から伊藤選手はあまり距離を置かなくなり、打ちたい気持ちからか相手の正面に立つ時間が増えてきました。そこを逃さず小関選手のパンチが襲い伊藤選手は明らかに被弾が増えてきます。
第7ラウンド 飛び込んでワンツーを当てたい伊藤選手ですが、ガードが甘いまま接近していくために小関選手の左が何度も直撃。
伊藤選手は以前から被弾時に顔が簡単に上を向いてしまう悪いクセがあり、この時にかなりのヤラレタ感が漂うのが大きな課題。
2回めのオープンスコアは69ー64、68ー65、68ー65。少し点差が小さくなっています。ジャッジ二人は第5ラウンドを伊藤選手につけたようですね。
第8ラウンド 判定では絶対不利だと悟った伊藤選手が前へ前へという動きを繰り返しますが、それを待っていたように小関選手が左を次々に着弾させ、ポイント差はますます拡大。
覚悟を決めて突っ込んでくる伊藤選手ををいなしながら、左を打ち込む機会をうかがうという、小関選手が最も得意とするシチュエーションとなってまいりました。
第9ラウンド 残り時間35秒、小関選手が圧倒的に有利な展開の中、伊藤選手の顔面に小関選手の左、右、左が全弾命中。伊藤選手は尻もちをつくようにノックダウン。
第10ラウンド 突撃する伊藤選手とそれを迎え撃つ小関選手。開始45秒、小関選手が左、伊藤選手が右を打ちにいったところで事故発生…
お互いの顔面が激突して小関選手の額が大きく裂けます。これ以上の試合続行は不可能。
試合は負傷判定となり、三人のジャッジの支持を受けた小関選手が王座防衛に成功。
ボクシングにバッティングは起こりうることではありますが、正直言ってこのカードに関してはこうなってもまったく驚きはありません。どの試合でも必ずバッティングの注意を受けている伊藤まみ選手と、過去に度重なる前科がある小関桃選手の対戦ですから、こうならないほうがおかしいとも言えます。
小関選手の傷はかなり大きいので今後の選手生活ではいろいろと不利になるかもしれません。バッティングの怖さを認識せず、矯正しない例がいくつもある女子ボクシング界は、このようなことが今後は繰り返されないように深く考え直してほしいと思います。
WBCアトム級タイトルマッチ
○王者 小関桃 こせきもも(青木)
10回負傷判定 3-0
×挑戦者 伊藤まみ いとうまみ(イマオカ)
(98ー92、98-91、99-91)
(伊藤選手は9回にダウン1)
今回の結果を含む両選手の戦績は以下のとおりです。
小関桃 こせきもも(青木)15戦12勝2敗1分3KO
伊藤まみ いとうまみ(イマオカ)15戦8勝6敗1分4KO
(戦績はJBC公認以前からの通算です)
コメント
小関選手は次の相手は黒木優子選手ですね。黒木選手は強敵ですがどうなるでしょうか。秋田屋戦や今回の試合のようなバッティングで終わるような試合は期待しません。