観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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サッカーにはFIFAしかないのに、ボクシングやキックにはたくさんの団体があるのはなぜ? どこの王者が一番強いの?

 MuayThai Kick Boxing Boxing

 「ボクシングやキックは団体が多過ぎてどこのチャンピオンが一番強いのかわからない」という声を聞くことがよくあります。

 たしかに多いですね。ボクシングの場合は国内ではJBCさんひとつでまとまっていますが、一歩外に出ればメジャーと呼ばれるところだけでもいくつもの団体が世界一を自称しています。

 国内のキック系、立ち技系と言われる団体はそれぞれに王座を認定していますし、さらに、自分たちの系列の世界組織が認定する世界王座というのがいくつもあります。

 「こういうのはよくないから競技ごとに団体がひとつにまとめればいいのに」と言う人がいるのは分かります。だけどその前にどうしてこのようなことになっているのかを考える必要があるでしょう。

 サッカーでは世界的に認められているルールはただひとつしかありません。そして、世界のすべてのサッカーチームはこのルールのもとでFIFAさんに集まっています。サッカーはルールが同じだからこそ、FIFAさんの下にひとつにまとまっていることが出来ます。

 しかし、キック系、立ち技系といった格闘技では、団体が違えばルールも違います。そして、そのひとつひとつのルールには、その団体ごとの格闘技に対する考えかたの違いがあるのです。

Sachiyo Shibata
キック/ムエタイ世界8冠王者 柴田早千予選手

 ヒザやヒジや投げやクリンチがあったり無かったり。ワザやルールの違いはそれぞれの格闘技の価値観、文化とも言えるものであり、ひとつのワザのある無しがその格闘技の来歴に大きくかかわるほどの違いです。そして、このルールの違いの中でいかに戦っていくか、いかに勝っていくかということが、多くの選手のテーマであり、多くのファンの興味の対象でもあります。

 ですから、QRは「共通ルールを作れ」などとは思いません。立ち技系はいろんな団体が乱立している現状で別に問題はないのです。自分が一番強いと証明したい人はいろんな団体のいろんなルールで勝てばいいのです。ベルトを取ればいいのです。

 キック系、立ち技系のマルチプルチャンピオン(複数団体王者)は「違うルールでも、アウェイでも、他団体のエースにも勝つことが出来る、強さと適応性に優れた最高のチャンピオン」という意味を持ちます。立ち技系の2冠、3冠、4冠王者という肩書きには大きな価値があるのです。

 過去に日本人ではキック、ムエタイ世界8冠の早千予[さちよ]選手というキックボクサーがいました。海外各地のタイトルマッチで勝ち続けた彼女は、故障により20代のうちに引退してしまいましたが、継続していればさらに記録を伸ばしていたことでしょう。

 熊谷直子選手は90年代に日本女子キックの基礎を打ち立てた偉大な選手でしたが、早千予選手は00年代に日本人選手の強さを世界中に見せつけた最高のファイターでした。どこの王者とでも戦って勝つ、これこそが真の強さなのです。

 さて、ボクシングの場合はルールは世界的にどこでも同じ。しかし、多くの違う団体があるのはなぜでしょうか。

 それは、ランキングの作り方や、試合の組み方が原因となって団体が分裂を繰り返したためです。

 サッカーなら同一カードをホームとアウェイで開催するなど、なるべく条件を公平にする配慮が可能ですが、ボクシングでは試合は基本的に一発勝負。サッカーのようなホーム&アウェイが出来ないので開催地などでもめるのです。

 特定の国の選手が有利なような試合が続くと、それに反発する人々がその団体を出て行って別の団体を作る、というのがボクシングが多団体状態になってしまった原因でした。

 これを「昔のようにひとつに戻そう」と考えるのは自然なことです。しかし、それは現実に可能なのでしょうか?そして、ひとつに統合された団体のランキングやタイトルマッチが公平なものになるのでしょうか?

 現実的に考えてそれは無理でしょう。神様でも機械でもない、人間の運営する団体が「完全に公平」に運営されるなんてありえないからです。

 それならいっそ、いろんな運営基準を持つ団体がたくさんあったほうが、どこの国の選手でもランキングの上位に行ける機会が出来ますし、タイトルマッチに出場出来るチャンスも増えて、結果的に公平に近くなると思います。

 その結果、複数の団体に複数のチャンピオンが生まれることになりますが、そのチャンピオン同士が戦えば誰が一番強いのかの結論は出ます。

 4月21日にウェルター級4団体王者のアン・ソフィー・マティス選手(フランス)が3団体王者のセシリア・プレークフス選手(ノルウェー)と戦うことが決まっており、これでこの階級の最強が決まります。このようにして王者同士が戦えば話は早いのです。

 というわけで、ボクシングの場合でも多団体の存在は別に悪いことではありません

 悪いのはよその団体を見ないふりして、弱い選手や無名選手の低レベルな試合を世界タイトル戦に認定するような団体の存在です。そのような団体のベルトに価値があるかどうかはファンなら誰でも疑問に思うでしょう。

 ボクシングでも、キックでも、強い相手をたくさん倒して最後まで残る選手が一番強いのです。

 多団体時代を問題視するよりも、マッチメークの質を監視するほうがボクシングやキックの権威を高めるためには大事なことではないのでしょうか。

カメラ 野口昌克  

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コメント

  1. みやび より:

    王者同士がベルトを賭けて闘うのが一番わかりやすいよね

    それと、どんなルールでも強い選手は本当の強さを持ち合わせてるものです

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