Boxing
ボクシングは倒すか倒されるかのシンプルなスポーツである一方で、判定になると観戦者にはわかりにくいとも言われます。
有効打の多いほうにポイントをつけるのがジャッジの基本なので、冷静に見ればよほどの接戦でないかぎりは判定もそんなにむずかしくはありませんが… 、その「冷静に」ということが案外大変だったりします。
なにしろボクシングは殴り合い。戦っている選手のファンや身内の人なら冷静に試合を見ろというほうが無理でしょう。そして、いい内容であればあるほど見る人の心を揺さぶるので、ますます冷静には見れません。
自分の応援する選手の攻撃がビシッと決まると「やった!」と思いますし、逆に打たれる場面では「いや、大したことない」と考えます。その結果、どうしても応援する選手のほうがリードしているように見えてきます。
こんなブログをやっているわたしたちだってそうです。日本人選手が外国人と対戦するときは日本人選手側に立って見てしまい、ギリギリの試合でも「勝った」と思います。そして判定を見て驚くことも。
そんなときは冷たいものでも飲んでから録画を見直すと、判定に納得出来たりします。当たり前のことですが、判定結果の多くはやっぱり正しいのです。
しかし、時には納得出来ない判定もあります。日本で記者をやっている人の多くは、そのような場合でもあまり波風を立てないような方向に記事を持って行くようですが、職業じゃなくて単なるファンとして試合を見ているわたしたちはおかしな判定は必ずそのように書きます(このブログはひとりで書かかず、複数の意見で書いています)。おかしな判定はおかしいと言わなければ、戦っている選手の人たちが気の毒ですし、応援しているファンにも救いがありません。
それから、冷静かどうかの感情以前に、ファンの人たちが判定方法を誤解していることもあります。
「ガンガン攻めたほうが優勢」「ダウンを取ったほうが断然有利」というのはまったくそのとおりなんですが、それはそのラウンドだけでの話なんです。これはけっこう試合を見ている人でも勘違いしている場合が多いのですが、ボクシングは試合全体を通しての印象ではなくて1ラウンドごとの採点の積み重ねで決まる競技なのです。
例えばAとBというふたりが4回戦で戦った場合、1ラウンドから3ラウンドまで地味にAが2、3発ずつ有効打を奪い、じっと手を出さずにチャンスを待っていたBが最後のラウンドでついに反撃、30発の猛ラッシュをかけたとします。Aは防戦一方で最終ラウンドはゴングで救われた感じです。
見ていた人たちは「Bのラッシュはすごかったなあ」「Bは強いなあ」と思うでしょう。でも、この場合の勝者はA選手です。
1~3ラウンドまでに有効打のあったA選手はそこまでで3ポイントかせいでいました。一方、最終ラウンドでその何倍もの有効打を当てたB選手ですが、ダウンを取ってない限りは1ラウンド中の有効打で入るポイントは1ポイントだけ。結果は2ポイントリードでA選手の勝ちです。
最終ラウンドでB選手がダウンを奪ったとしても入るポイントは2ですから、A選手のリードには追いつきません。この場合も勝つのはA選手です。
これは少しもおかしなことではなく、ボクシングというのはそういうスポーツなのです。一発で決まるKOのダイナミックさと、ラウンドごとのポイントの戦略性という正反対の要素の組み合わせで出来ている奥の深さがボクシングの面白さ。
決定力に優れた豪快な選手に地道で冷静な選手が勝つ道もある、というのがボクシングなんですね。
ともすれば派手なパンチの応酬に目を奪われがちなのがボクシングですが、計算された試合運びの面にも関心がいくと、もっともっとボクシングシーンは面白くなってくると思います。
*注 本文と写真とは関係ありません。
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コメント
そうだそうだ
すごい遅い投稿ですが。
ご愛読ありがとうございます。以前の記事でもコメント歓迎です。うちのブログはむかしの記事ほど読まれる傾向があるので。