観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その24 どうしてボクシングや格闘技の選手は身近な相手にばかり礼を言うのか? あるいは謝罪するのか?

 「ファンのみなさんありがとう!」「この勝利はサポーターみんなのおかげです!」Jリーグの勝利者インタビューでよく聞くことばです。これはサッカーでは当たり前で、言わない選手はほとんどいません。

 それにくらべて、後楽園ホールのボクシングや格闘技の選手はマイクを向けられて感謝の言葉を口にするときでも「ありがとうございます」とは言っても「ファンのみなさん、ありがとう」とハッキリ言葉にするひとはあまりいないですね。

 ご存知のとおり、後楽園ホールの客席は1700程度。これに比べてサッカー会場のキャパは何万もあります。

 その何万席がお客さんで埋まれば黒字ですが、逆に空席だったら大赤字。自分のチームが赤字だったら、来季の報酬の交渉もかなり困難になるでしょう。いい年俸がもらえないとそれはそのまま自分の選手生活に直撃です。

 だから、サッカー選手はお客さんのことはいつも気にしています。入場料収入のことや、スポンサー収入の仕組みも知っているので、そういう気持ちが言葉に出ます。

 でも、ボクサーや格闘技選手の多くはそれで生活をしているわけではありません。だから、あまり大会の運営面のことには意識が行きません。

 そんなわけで、やっとタイトルを取ったばかりの格闘技選手のあいさつはこんな感じです。「おかげさまでここまで来れました。丈夫に育ててくれた両親に感謝します。応援に来てくれた職場のみんなありがとう!」そして選手やジムから直接チケットを買ってくれた応援団に一礼して退場。

 その後、タイトルを何度か防衛するころには、大会運営のためにジムの会長さんがいろいろおカネに苦労してるとか、後援会や地元の事業者のひとがおカネを出してくれているとか、そういうことが見えてくるのであいさつも「ジムの会長、後援会のみなさん、いつもお世話になってる(スポンサーの)◯◯さん、本当にありがとうございます。そして、応援のみんなありがとう!」という感じになっていきます。でも、依然として一般のファンへの感謝は見られないのが普通。

 ほとんどが身近な人へのお礼ですが、そのことばはどうしてもリングの上で言わなければならないものでしょうか?

 両親や、応援団や、会長や、後援会や、スポンサーさんには、あとでいくらでもお礼を言えるじゃないですか。直接、相手の顔を見ながら。

 しかし、一般のお客さんはいましかそこにいないのです。だから、実際に応援してくれたかどうかは別にして、とにかく試合を見てくれた客席のみなさんにお礼を言うのが本当は一番の優先事項です。

 きっちりお客さんにお礼を言えば、次からも応援してくれるかもしれませんし、帰りにツイッターで「いい試合だった」とつぶやいてくれるかもしれません。

 ファンを増やす一番のチャンスは試合直後なのです

 もう一度書きますよ。ファンを増やす一番のチャンスは試合直後なのです

 プロはその機会にファンを増やさなかったら次のステップに行けません。「ファンのみなさんありがとう!」これを言わないでスターになったひとはいません。試合を見てもらえるのはありがたいことなんです。

 だって、次のステップはもっとおカネがいるのです。だから、もっと大きなスポンサーさんを見つけなくてはなりません。そして、大きなスポンサーさんは、自社のイメージを高めるために選手の人気や好感度がほしいのです。

 もう一度書きます。大手のスポンサーさんは選手の人気や好感度がほしいのです。

 数年まえ、某ジムにはとてもいいスポンサーさんがいました。ドカッと資金を出してくれるので、会場を押さえたり、豪華なパンフを作ったり、スポーツ専門チャンネルの枠を買ったり、ほかのジムがうらやむようなことがいろいろ出来ました。

 あるとき、会場にスポンサーさんがやって来て、来賓あいさつのためにリングにのぼったとたん、その表情がくもりました。目の前で、お客さんが帰っていくのです。

 まだこれからメインが始まるというのに、さらにお客さんは帰り続け、会場のガラガラはどんどんひどくなり、スポンサーさんの表情はさらにこわばっていきました。

 そして、この大会のあと、スポンサーさんはジムを離れました。

 大きなスポンサーさんは、趣味や道楽や会長との友情でおカネを出してくれるのではなく、自社のブランド力アップにスポーツ選手のイメージが有効だと判断しておカネを出しているのです。

 だから、目の前でぞろぞろと100人、200人のお客さんが帰ったら、スポンサーさんは撤退を考えるわけです。人気のないジムにおカネを出してもなんにもなりませんから。

 お客さんひとりひとりの出すお金は数千円からせいぜい1万円、2万円。

 ホール規模の会場なら、チケットの売り上げを全部あわせてもスポンサーさんたちの出すおカネより少ないかもしれません。

 でも、そのひとりひとりのお客さんを大事にしないと大きなスポンサーさんはいなくなっちゃうんです。もちろん、テレビや雑誌の取材も来ません。人気のない、知名度の低い選手に力を貸してもなんにもならないからです。

 いい試合をして勝ったなら、ハッキリとお客さんに好感を与えてファンになってもらうところまでがプロの仕事。

 スターと呼ばれる選手は、2階席や、3階席や、一番遠くのお客さんにまでしっかり顔を向けて手を振ります。お客さんの歓声がスポンサーを呼び、さらに大きなチャンスにつながることを彼らはわかっているからです。

 身内はもともと味方なんですから、お礼は後回しでいいんじゃないでしょうか?

高野_人母美
 こんな記事を書いている途中に、高野人母美選手が自身の非常識な言動により謝罪しなければならない立場に置かれるという事案が発生しました。

 例によって当ブログはウラの事実関係は関知しませんが、オモテの経緯だけを見ればあまりにも会長さんに対して礼を欠いた行動でしたので、会長さんへの謝罪は当然だと思います。

 でも、一般のファンへのことばも同じぐらいに大事だということを忘れないでもらいたいと思います。

 高野人母美選手はいまのボクシング界ではたぶんナンバーワンのCM出演数を持っているでしょう。

 それは高野選手にとても大きな好感度があるからです。

 その好感度を保つために一般の人々に向って「ファンのみなさん、すみませんでした」と頭を下げる必要があるのです。今回のことは単に会長と選手の問題ではないのです。

 実際にチケットを買ってくれる人は数百人かも知れませんが、それは氷山の水面上の一部であって、全国には潜在的ファンがいたるところにいるのです(ホールの数百人だけがファンならば、ボクシングや格闘技を伝えるメディアは存在しないでしょう)。そのひとたちのことを忘れてはプロはお仕事が出来ません。顔の見えない多くの潜在的なファンこそ、人気選手だけが持つ宝なのです。だからそのひとたちのことを大事にしましょう。

 人気商売ってそういうものでしょう。

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コメント

  1. はまっこジュン より:

    そうだよ
    そういうことをまわりも教育しないからダメ
    ほかのプロスポーツとそのへんが差なの!

  2. 次元 より:

    ボクシングは指導者もわかってないもん

  3. queens of the ring より:

    >はまっこジュンさん
    そうなんですね。コアなファンには別にお礼なんか言わなくてもいいんですが(コアなファンは試合そのものが好きなので小さいことは気にせずついて来るのでW)、ライトなファンには礼儀は絶対に欠かしてはダメですから。
    プロで活躍するとか、メジャーになるということは、どれだけライトな層を取り込むかってことなんで。

    >次元さん
    ああ、そうかもしれませんね。

  4. 格闘おやじ より:

    自己満でやっている人が多いとつくづく思うね。格闘技界自体の発展は全く考えていないというか。

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