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ボクシングの判定基準は『有効打』 その上に来るものは無い 天海ツナミ vs 山口直子の解説で混乱する表現を考える その1 ボクシングビート編

 Boxing

 本屋さんにはボクシング雑誌の9月号が並んでいます。

 判定内容が議論を呼んだWBA世界タイトルマッチ天海ツナミ vs 山口直子戦がどのように書かれているのかチェックしてみました。

天海ツナミ vs 山口直子

 この試合は現場で目で見て、さらにテレビ放映でも確認しましたが、10ラウンドのうちの過半数のラウンドで天海ツナミ選手が有効打で上回り、普通なら王者のツナミ選手が勝ちになる試合でした。

 しかし、判定はジャッジ全員が挑戦者の山口選手に97をつける大差で、新王者の誕生。

 この判定について、試合直後からいろいろな言い方でジャッジを擁護する人たちがいますが、専門誌はどう書いたのでしょうか。

 判定のむずかしい接戦というのはたしかにあります。僅差の判定というやつですね。しかし、今回は大差の判定です。

 普通は、大差の試合は誰の目にもハッキリと勝ち負けのわかるもの。もしも、その試合が判定どおりの内容だったなら、ボクシングの専門誌が特にジャッジについての説明をする必要はないはず。

 ところが、今回はどの雑誌も実にくどくどとした説明に誌面を費やしています。

 まず、「天海が自分の意思で動いていたのか、山口のプレスで動かされていたのか、そこをどう見るかで優位に立つ者が変わってくる」と判定を解説しているのがボクシングビートさん。

 が、ボクシングファンならご存知のとおり、そんなことでは試合の優位は変わりません。採点基準はあくまで有効打であり、相手を動かす動かさないは判定要素の下位。

 ボクシングは相手を動かすゲームではなくて、相手にパンチを打ち込む格闘技なのです。

判定基準 どちらの選手が有効打で上回ったかということが第一。どちらも有効打がなかった場合はどちらがより攻撃的だったか(いわゆる手数)で勝敗を決めるのがボクシング。たいていはこのふたつで白黒がつきます。

 けれども、両者とも見合ってばかりで有効打がなく、手数も少ないというつまらない試合もときにはありますから、そんなときは、どちらがゲームを支配していたかとか、防御がうまいのはどちらかということで勝敗を決めるということになります。

 逆に言えば、有効打があったり、双方が手数を出しているようなまともな試合のときは、試合運びがどうとかは判定にはほとんど関係ないのです

 有効打のある試合では有効打が最大のポイント。それ以上に評価されるものはありません。

 プロボクシングではどんな試合をしようとも、打ったほうが勝ちなのです。

 もちろん、そんなことはボクシング専門誌の人なら言われなくても充分に分っています。それでもそんな解説をしてしまうのは、この試合の判定が普通の方法では説明出来ないものだからでしょう。

天海ツナミ vs 山口直子

 説明しにくい判定が出た時にメディアが解説に使うのは「こんな見かたもある」「もしかしたらジャッジはこう見たのかもしれない」という見かた論です。

 けれども、本来、ボクシングの判定はそんな個人の価値観とか主観とか印象に左右されるあやふやなものではなく、有効打、または手数で、何ラウンド取ったのかという数字が決定要素。見かたは最初から決まっているのです。

 「こう見えたかも」というあいまいなものではなく、有効打や手数などの事実で決まるシンプルな世界が本来のボクシング。

 ボクシング業界の解説者や記者の人たちは、そのへんを故意にゴチャゴチャにしています。

 ボクシングのためにいいことだと思っているのかどうかわかりませんが、ひとは意味不明のものは好みません。スッキリしないスポーツに魅力はありません。

 政治家トークみたいなワケの分からない文章でボクシングを書いているみなさん、それは誰のためのものですか? ファンを増やしますか? 減らしますか? ボクシングのためになるんですか?

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